今後の政治日程の中で菅首相の決断に絡むとみられるのは、5月24日に東京で始まる自衛隊主導の大規模ワクチン接種のゆくえだ。17日に始まったオンライン予約はシステム上の不備も露呈し、目標の1日1万回接種が実現できないと計画が挫折しかねない。

 その次は最初のXデーとされる5月28日。政府としてはこれまでと同様に前日の27日に菅首相と関係閣僚で東京の宣言解除などを協議し、28日の政府諮問委員会や対策本部で正式決定することになる。

5月28日の宣言解除は望み薄

 菅首相は今のところ、5月28日の宣言解除を強く期待しているとみられる。東京の新規感染者数は17日に419人にまで減少し、18日も732人に留まった。その後も減少傾向が続けば、27日までに「ステージ4脱却」の目安となる直近7日間の人口10万人当たり新規感染者数が25人を下回る可能性は残る。

 しかし、宣言が始まった4月25日から3週間経っても新規感染者数の減り方は鈍い。1月の前回宣言時には新規感染者数が3週間で半減したものの、解除時にはなお高止まりし、それが今回の宣言発令につながった。政府諮問委員会の尾身茂会長は「新規感染者をステージ2(7日間で人口10万人当たり14人以下)にまで減らさないと、すぐ感染が増えて、また宣言を出す羽目になる」とステージ4脱却での解除に否定的だ。

 菅首相は5月14日に専門家の意見に従って当初方針を転換しており、28日に専門家が反対する中での「独断専行」は困難とみられる。このため、「最低でも1週間の新規感染者数がステージ2以下にならない限り、期限延長は不可避」(感染症専門家)というのが大方の見方だ。

 そこで問題となるのが緊急事態宣言の延長幅だ。6月13日に延ばすなら、分科会を11日の金曜日に開くのが通例だ。ただ、同日はイギリスで先進国首脳会議(G7)が始まり、菅首相も出席する予定のため、10日に一連の手続きを済ませる必要が出てくる。

 その場合、宣言解除のためには9日の時点で7日間平均の感染者数がステージ2前後まで減っていることが必要だが、「イギリス変異株にインド変異株の感染拡大も加われば、達成は微妙」(分科会メンバー)との見方が多い。「もし、宣言の再延長に追い込まれれば、その時点で6月中の解除は困難となり、五輪中止も検討せざるをえない」(都庁幹部)ことになる。