役のイメージを壊したくないがゆえに

『古畑任三郎』で“犯人”として刑事・古畑と対峙した田中美佐子にとっても、田村さんは特別だった。

「現場では、ジョークを言っては静かに笑っていたりもする田村さんですが、リハーサルでも本番でも1発OKでNGは見たことがありません。台本を持っている姿すら見たことがないんです。私は共演というだけで緊張してしまって、お芝居以外ではひと言もお話しできませんでした。田村さんに話しかけられるのは芝居のときだけ。普段は話しかけてはいけないって」

ありし日の田村正和さん。木村拓哉との共演も
ありし日の田村正和さん。木村拓哉との共演も
【写真】米倉涼子と並んでもサマになる“マサカズ立ち”の田村さん

 トレンディードラマで主演を務めた女優をして、そう言わしめてしまうほど、田村さんは俳優という“生き方”に強いこだわりを持っていた。彼と公私にわたって付き合いがあった数少ないドラマ関係者のひとりが振り返る。

「食事をしている姿を他人に絶対見せなかったというのは有名な話。撮影の合間でも、食事はいつも控室か宿泊先のホテルの部屋でひとりでとっていましたから。そういうところを周りに見せて“俳優・田村正和”のイメージや、あるいは役のイメージを壊したくないと考えていたんでしょう。世の中の人に、いいドラマを見てもらうためにね。“1シーンごとにその場で映像チェック”とか“撮影は朝8時から夜10時まで厳守”も同じ理由です」(ドラマ関係者、以下同)

 夜10時きっかりにスタジオを後にすると、まっすぐ自宅に帰ることが常だった。

だから“気難し屋”なんて誤解されたりしていましたけど、正和さんはむしろ話し好きで人好き。誰に対しても気さくでしたし冗談も言う。だから仕事帰りに飲みに行けるような親しい仲間はもちろんいたけれど、でも、そうしないんですね、正和さんは