「3週間ほど前、妻の女友達がわが家に遊びに来たときのことです。僕は書斎で仕事をしていたのですが、ふとトイレに行くために廊下に出たとき、“やっぱりアラサー男子ってかわいいわよね! 私、今回は本気かもっ!”とはしゃぐ妻の声が漏れ聞こえてきたんです」

 そのときは、美紀さんが夢中になっている韓流アイドルの話をしているのかと思い、やり過ごしたものの、どうやら今となって政彦さんの「男の第六感」が働いたのです。

「妻が浮気相手に夢中になって、離婚を切り出したのではないか」そんな仮説が政彦さんの心の中に浮かび上がってきたといいます。

 離婚の申し出には応じたくない、浮気は「シロ」であってほしい──葛藤を抱きながら、政彦さんは、探偵事務所のドアを叩いたのです。

病院から退勤した妻を尾行すると

 前出の岡田さんは、次のように語ります。

「浮気など非があるほうの配偶者を『有責配偶者』と呼びます。一般的に有責配偶者からの離婚の申し立てには、必ずしも応じる必要はありません。もし美紀さんがクロだった場合、政彦さんは申し出を却下する権利がある。さらにその場合、政彦さんは、精神的苦痛を伴ったとして慰謝料を妻の不倫相手からも請求することもできます」

 離婚をはねつけるにせよ、その先に慰謝料を迫るにせよ、まずは妻の不貞を証明する「確たる証拠」が必要というわけです。
 
「浮気の証拠には客観性が重要であるため、誰がどう見ても浮気や不倫だと判断されるような証拠が必要になります。具体的には、街中でデートをする様子やラブホテルに出入りしている写真や動画があるといいでしょう」(岡田さん)

 この証拠写真を撮影する際、当然ながら配偶者と不倫相手の顔がはっきりと写っていることが重要です。「さすがに、そこまでの気力もスキルもない」と判断した政彦さんが探偵事務所に依頼したのは、まさにその点だったといいます。

 その後、探偵による尾行や張り込みによって出た結果は、「クロ」。病院から退勤した美紀さんを追うと、男と落ち合い、ラブホテルへ入っていったのでした。美紀さんは浮気をしていたのです。

「相手は、同じ病院に勤める年下の看護師でした。妻は昔からよくも悪くも、なにか1つのことに夢中になると、周りが見えなくなるタイプ。きっと禁断の恋バナを友達に打ち明けているうちについ夢中になってしまって、同じ家の中に僕がいることも忘れてしまったのでしょう。そして遊びが本気になって、“離婚したい”と言い出したのだと思います。とはいえ、息子はまだ中学生、とうてい離婚には応じられません」