愛知県常滑市で行われた野外音楽フェス『NAMIMONOGATARI(波物語2021)』に対する非難が止まない。

 国や自治体が上限として定めている5000人を大幅に超え、8000人が集まった密状態で、アルコールも提供していた事態に、自元自治体はカンカンだ。伊藤辰矢常滑市長は主催者に抗議文を送付し、二度と会場を使わせないと伝えたという。

 出演者のラッパー、Zeebraも「危険な状況だった」と当日の様子を振り返り「誠に申し訳ありませんでした」と全面謝罪。ヒップホップアーティストのAK-69も「自らは出演辞退、イベントの開催中止を主催者側へ提案すべきでした」と振り返ったが、その言い訳がかえって「かっこ悪い」と炎上を招いてしまった。

舞台裏のアーティストは守られていた

「やってくれたな」

 同フェスに所属アーティスが出演していたレコード会社関係者、まずはそう呆れた。主催者は地方のクラブイベント、屋外イベントを手掛けている会社で、企画書もきちんとしていたという。

音楽ライブに出演するかどうかは、コロナ禍の今、企画書をよく見ます。そこにどんな感染対策が施されているかを重視します。今回は、企画書ではいいことが書かれていたんです。ただそれが守られなかった」

 と残念そうに明かし、

「会場をブロックごとに区切り、それぞれに入場者数の定員が書かれていたのに、ブロック化が守られず前方に集まってしまい蜜を作り出してしまったことがルール違反。音楽フェスが批判を浴びないかどうかは、それが守られるか。先日開催されたフジロックでも徹底されていた」

 と続けた。

 密を作れば、客は感染リスクを背負う。客をないがしろにする一方で、舞台裏ではアーティストを守る工夫がされていたという。

「東京オリパラでも実施されましたが、バルーン方式を取り入れていました。楽屋からステージまで、少し距離があるのですが、マイクロバスを出してアーティストを移動させました。事務所関係者、マネージャーも同乗できるのはせいぜい2人まで。ここまで対策をするんなら大丈夫だろうと思ってステージに出たら密状態だったため、アーティストも呆れたようです」(前出・レコード会社関係者)

 密であり、さらに客が歌を歌っていたこと、アーティストが客を煽っていたこと、売店では酒が提供されていたことは、入場者のSNSによってあっという間に拡散し、世間の批判が集中するハメになってしまった。

「クラスターを出さないよう、出さないように工夫して、そろりそろりと音楽イベントを開催できるようになりつつあるのに、それが一挙に逆戻りしてしまった。アーティストにも非難が集まっているし、レコード会社も悪者のされている。ほんと、散々ですよ」(前出・レコード会社関係者)

 ルールにのっとって開催する以上、ルールは厳格に守らなければならない。一部の不届き者がいるだけで、全体がダメになってしまう。

 そんな悪例として刻まれる音楽フェスになってしまった。

〈取材・文/薮入うらら〉