政治家には想像力が大切

 現在、鈴木さんは外務副大臣を務める。

「防衛と外交は国会議員だからこそできる責務ある仕事。27歳のときに初当選し、向こう30年使っていただくと仮定すれば57歳になっている。将来的な伸びしろがあることが私の強みだと思っていたので、早い段階から防衛や外交に携わりたかった」

 と胸の内を明かす。

 そのうえで、引き続き実行していきたい分野があるという。それがフェムテックだ。フェムテック(FemTech)とは、FemaleとTechnologyを掛け合わせた造語。女性が抱える健康課題をテクノロジーを使って解決する取り組みをさす。

「フェムテックは月経対策と認識されがちですが、女性の健康やその課題をテクノロジーを使って解決し、より人生を充実させていこうというサービスや製品のこと。更年期の対策や、性教育にだって関わることだと考えます」

 更年期に対する理解と対処法を国の制度によってどれだけサポートできるかは、とても重要だという。

「更年期を健康上の理由として、仕事を辞める、あるいはポストを辞退される方が16%もいると聞きます。活躍する女性のロールモデルを失わないためにも早急に対策をしていきたいものです」

 また、性教育の捉え方についても力を込める。

「正しい情報を伝えることで子どもたちは自主的に判断する力を養うようになります。望まない妊娠や中絶も減少し、命の尊さと向き合うことにつながる。私は“包括的性教育”という言葉を掲げているのですが、それはポジティブに性と向き合い、自尊心や自己肯定力を高めるための取り組みです。

 性教育などのデリケートな領域は、『寝た子を起こすな』ではないがアンタッチャブルなところがあります。しかし、感情論ではなく、データやテクノロジーで解決の糸口を見つけられる。来年は、『データで語る性教育』を自民党内で立ち上げようと思っています」

 冒頭の言葉が示すように、女性であり、母親であるからこそ、鈴木貴子にしかできないことを掲げていく。「子育てには、政治家に必要な素養が詰まっている。男性の議員さんは、絶対に子育てに関わったほうがいい」とも。

「つまるところ想像力なんですよね。自分がしんどい思いをして産んだわが子ですら、なんで泣いているのかわからないときがある。『おむつかな?』『お腹すいたかな?』といろいろ試すけれど、それでも泣きやまない。すると、テレビの音で突然泣きやんだり(笑)。

 子育てはこういったことが日常茶飯事です。そのたびに想像力を働かせて、いろいろと考える。その想像力って、とても大事なことだと思うんです。政治家は、まず想像力が必要な職務。そして、行動する。社会には、みなさんの暮らしには、何が必要なんだろう。想像する力を、子育ては教えてくれる」

 父・鈴木宗男は行動力を体現する政治家だった。だが、鈴木貴子は、機動力と想像力を併せ持つ政治家として、国民の汗になると誓う。

すずき・たかこ 1986年北海道生まれ。比例北海道ブロックで2013年に初当選し、現在は当選4回。元防衛大臣政務官などを経て、現在は外務副大臣。孤独・孤立対策の議論をリードし、内閣官房に孤独・孤立対策担当室を設置。父は鈴木宗男参院議員。2児の母でもある。

(取材・文/我妻弘崇)