健診を受けても寿命は延びない!メタボ健診

 厚生労働省の旗振りで、2008年からスタートした「特定健康診査」。健康保険に加入している40~74歳の人は、義務として受けなければならない。俗に「メタボ健診」といわれているのは、メタボリック・シンドロームに着目したものだからだ。

 女性でいえば、腹囲90cm以上、BMI25以上が基準値オーバーとされ、保健指導を受けることになる。逆にいうと、超えていなければ、健康が維持され、長生きできると思いがちだ。しかし、実はその根拠はあまりないという。

「欧米でボランティアを募って腹囲を測り、5年後と10年後の死亡率を調べたところ、腹囲と寿命には、ほぼ関係がないという結果が出ました。また英国と米国の専門機関では、定期的に健康診断を受けている人と受けていない人を調査すると、定期的に健診を受けている人のほうが、総死亡率(すべての死因による統計)が高いという結果も出ています。いくら健診を受けても寿命は延びないということです」

 岡田先生によると、欧州などでは健診の制度はあるものの、国として推奨はしていないところもあるという。米国も、ビジネス化されているので受ける人は多いが、国は推奨していないそうだ。その意味では、国が健診を推奨している日本は特殊といえるという。

 日本が特殊なのは、原則すべての国民が何らかの健康保険に加入するという国民皆保険制度があるからだ。そのため、基本的に全国民に職場や自治体から定期的に健康診断の案内が届く。その結果、健診も検診も当然受けるものだと、思い込んでしまうのだ。

「国民皆保険制度そのものはいいとしても、国が『健診を受けなさい』というのは間違い。いちばん問題なのは、法律で強制していることです」

 岡田先生が指摘する法律とは労働安全衛生法のことで、雇い主は従業員に年1回以上の健診を受けさせなければ罰せられてしまうのである。

「その健診の中には被ばくのリスクが高い胸部エックス線検査なども含まれています。これは『すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する』という憲法第二五条に違反しているとさえいえると思います」

「余計な手術」の温床!人間ドック

 こうした義務である健診に対して、任意なのが人間ドックだ。

 これらはCTやMRIなど高度な医療機器を使うので、平均費用は4万~6万円と高額だ。にもかかわらず、受けている人は多い。

「CT検査はほかの検査よりエックス線量が多いため懸念も大きいです。1度の検査ですぐに深刻な状態になることはありませんが、エックス線は放射線の中でもエネルギーが強く、体内に入り込むと遺伝子を傷つける危険があります。毎年検査を受け続ければ、正常な細胞ががんに変化する可能性があります」

 英国で調べたがんの原因に関する調査によると、検査として行われたエックス線の照射ががん発症の直接の原因となっていた割合は0・6~1・8%だったという。その中で大きなウエートを占めていたのがCT検査だったそうだ。

 一方、MRIは磁力を用いた検査でエックス線を使わないので被ばくの心配はない。

「しかしMRIを使うと、CT検査ではわかりにくかった小さな異変までわかり、いろんな病気が見つかります。見つけた以上は、病院としては治療しないわけにはいきません」

 そういった治療こそ、岡田先生によると不要なものであることが多いという。

「初期のがんの場合、小さいままだったり、消えてしまったりすることも少なくありません。そのままでも大丈夫なのに、人間ドックで見つけてしまって余計な手術をした結果、身体の抵抗力が落ちて別の病気になってしまうケースもあるのです」