過去には殺処分されたベンガルトラも

 トラはお咎めなしでいいのか。

「報道で知る限り、園は飼育員とトラのあいだに必ず檻を挟む間接飼育をしていたようです。給餌時など危険な生き物の世話をするにあたっては、同じ空間に一瞬たりとも飼育者と生き物が入ることのないようにする間接飼育が望ましい。そうしていたにも関わらず飼育員とトラが対峙してしまったわけですから、構造上のミスか、テクニカルなミスがあったことが考えられます。生き物は、通路があって開いていれば通っていくのは当たり前なんです」(白輪園長)

 アミメニシキヘビやワニガメの捕獲依頼を引き受けたのは、人に危害を加えるようなミスコンタクトを未然に防ぎたかったから。その万が一が起きた場合、もし白輪園長ならばどう対処するのだろうか。

「難しい質問ですね。トラは悪くないという論調はどうしても起こるでしょう。しかし一方で、被害者の感情やご家族の気持ちも考えてあげなければいけない。飼育員を志すような人ですから“殺処分してください”とは言わないかもしれませんが、ほかの飼育員のモチベーションも考慮する必要があります。

 少なくともトラという高等動物が人間の血の味を覚えてしまったわけですから、今後は間接飼育を完全に守らなければいけない。隔離して非公開で飼い続けることも選択肢のひとつでしょう。いずれにしても、それぞれの園の方針ですから、第三者がああせい、こうせい、とは言えないことだと僕は思います」(白輪園長)

 過去の事例を調べてみると、2000年2月に東京・町田市の動物プロダクションで飼育員に噛みついて死亡させたベンガルトラは薬殺処分されている。17年2月に長野・小諸市の動物園で飼育員を噛んで重傷を負わせたライオンについては、有識者による事故検証委員会が事故原因を人為ミスと認定し、ライオンも被害者といえるとして「殺処分にしなかったのは適切な判断」と園の対応を評価した。

ボルタは寅年の今年、年賀状にも採用された(那須サファリパークの公式ツイッターより)
【写真】飼育員を襲ったトラは世界で約30頭しか飼育されていない希少種

 那須サファリパークでは1997年と2000年にも飼育員がライオンに噛まれる事故が発生している。

「その事故当時はマニュアルが徹底されていなかったと聞いており、以降はほかの動物園の事故なども反映して毎年のようにマニュアルを更新し、その都度、徹底してきたところでした」(前出・葛原支配人)

 まずは事故原因の究明だろう。