前日、トラはエサを食べていなかった

 事故原因の解明は県警の捜査などを待つしかない。予断は禁物とはいえ、ボルタがトラ舎内の自室にあたる獣舎の中にいなかったことからも、前日獣舎に戻れずエサを食べていなかった可能性はあるだろう。

 空腹で人間を襲ったのか。

「わかりません。仮にエサを食べたあとでも人と出くわせば襲ったかもしれませんし、それが見慣れている人でもそうでなくてもトラは力加減が違いますから。見慣れているから近づいたのかもしれないし、人がいてびっくりしたのかもしれない。ボルタの気持ちはわかりませんが、調教できる動物ではありませんから」(前出の葛原支配人)

飼育員を襲った毛並みが金色のトラ「ボルタ」(那須サファリパークの公式ツイッターより)
飼育員を襲った毛並みが金色のトラ「ボルタ」(那須サファリパークの公式ツイッターより)
【写真】飼育員を襲ったトラは世界で約30頭しか飼育されていない希少種

 常駐する獣医によって麻酔銃を撃ち込まれたボルタは、しばらくノロノロと動いたあとに眠ったという。現在は自室の獣舎におり、ほかの飼育員が経過観察している。

 事故後、同園には、ケガをした飼育員を心配するメールや電話などが数多く寄せられており、ボルタの処遇を気にする声も多いという。

《ボルタを殺処分しないでください》

《ボルタはどうなってしまうのか》

 そんな声を届けられた前出・葛原支配人は表情を変えずにこう話す。

「人を襲ったからといってその動物を殺処分する動物園はどこにもないと思います。一般の方にはそんなイメージがあるのかもしれませんが、管理動物のやったことはみな人間の責任です。ボルタが殺処分されることはありません。管理している人間側の責任です」

 第三者にあたる専門家はどうみるか。危険性の高い、脱走したアミメニシキヘビや池に捨てられたワニガメを頼まれて捕獲した国内最大の爬虫類・両生類の体感型動物園「iZoo(イズー)」の白輪剛史園長に聞いた。