3年間預けっぱなしの親

 同園でも年末年始には特別行事をすることはせず、お正月飾りを作って飾るなどいたってシンプル。

「節目の日でも親と離れて保育園で過ごす子どもたちのメンタルをまずは考えています。食事も年越しそばはアレルギーの問題がありますし、餅はのどに詰まらせるリスクが高いので普段と変わらないものを提供します」

 利用者は年末年始に興行を行うイベント関係者が多く、正月休みのある一般の会社、飲食店、医療関係の従業員世帯の利用は少ないそう。

「認可外で少人数なので個別に対応し、より保護者の気持ちに寄り添う保育ができるのも私たちの特徴です。例えば食事も子どもたちに何が食べたいか尋ねたり、家庭内の声かけのようなコミュニケーションをとることもあります」

年末年始の登園では人数が少ないため先生を独占できると喜ぶ子どももいるそう(画像はイメージです)
年末年始の登園では人数が少ないため先生を独占できると喜ぶ子どももいるそう(画像はイメージです)
【写真】自宅のようなアットホームな造りの「キッズタウンうきま夜間保育園」

 富澤さんはある親子との正月について明かしてくれた。

「数年前、ここに3年間ずっと預けっぱなしにされていた子がいました……」

 ときどき帰宅はするもののほぼ、同園で過ごしていた。

「行政も介入し、何度も話し合いを続けていました。親御さんと連絡が取れないわけでもないし、保育料も振り込んでいる。ですが、育児放棄に近い状況でした。

 預かる先がなかったらこの子は放置されていたのかな、と思うと……。私含め職員はみんなその子が寂しくないように愛をもって接していました」

 当然、その子はクリスマスも正月も同園で過ごした。

「帰宅し、親と過ごしていないのでさまざまな経験が乏しかった。そこでお正月にその子を特別に遊びに連れていったこともあります。あの子にとっての子ども時代のクリスマスやお正月はここでの思い出かもしれません」

 その後、親戚に引き取られ、同園を退所したという。

 年末年始に限らず、出産時に上の子の一時保育を頼まれることや、親の出張やさまざまな理由で昼間はほかの保育園に行き、夜は同園に泊まる子どももいるという。

「翌日はうちの園からほかの保育園に送ることも多いです。迎えに行くこともあります。習い事の送迎もやりますよ。

 都市部に住んでいると頼る人が夫と自分のほかにおらず、友達にもなかなか頼みにくいことも。そんなとき、私たちが臨機応変に対応させていただくことも多いです」

 困ったときの駆け込み寺的な存在。さらには仕事が理由で預けるだけでなく、もっと個人的な事情での一時保育も利用してほしいと願う。こうした利用はまだまだ日本ではハードルが高いのだ。

「ご夫婦で食事に行ったり、ママ友とのランチなど個人的な用事で一時保育を利用してもいいと思うんです。親御さんにもたまの息抜きは必要です。

 両親が時間をとって仲がよく、両親に気持ちに余裕があって元気でいることが子育てには大切な部分でもあると思います。そのために利用してもらいたいと思っています」

 夜間保育所の年末年始。そこには家族とはまた違った愛にあふれる“もうひとつの自宅”の姿があった。

株式会社TWO CARAT 富澤志保さん●認可外保育園『ラブクローバ―』代表。ベビーシッターや夜間の学童保育、病児・病後児の受け入れなど多岐にわたって展開。首都圏のほか、北海道など各地で認可保育園も運営している。