性教育の必要性を説く鈴木おさむさん(撮影:尾形文繁/東洋経済オンライン)
性教育の必要性を説く鈴木おさむさん(撮影:尾形文繁/東洋経済オンライン)
【写真】人工授精で長男を授かったという鈴木おさむさんと妻の森三中・大島美幸

――男性の不妊への理解が深まるためにはどうすればいいのでしょうか?

 自分ごとと思うしかないです。「メンズチェック」みたいにして、人間ドックを受けるみたいな感じで、30歳になったら自分を知っておくために受ける。それは結婚を意識する必要はない。

 あとは学校での教育ですね。人を殺しちゃいけないじゃないですか。子どもが生まれる、生まれないということも、同様に命に関わること。体外受精だって、人工授精だって、隠す必要はないし、そういうのも含めてもっとちゃんと教えるべきです。うちの子も人工授精ですが隠していません。

性教育の重要性

 女性は、保健体育の授業で生理の話などきちんと聞かされると思います。でも男の人ってそういう教育を受けてこなかった。だから精液の中に精子がない人もいるということもちゃんと中学校くらいで教える必要があると思う。

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 今、大学の授業を受け持っているんですが、「なぜテレビで暴力的なものが減ったのか」をテーマに150人くらいにレポートを書かせました。そしたらみんな「面白くないから」と回答するんです。

 それで1つわかったのは、実は日本の教育ってすごくアップデートされていて、おそらく僕らの時代よりイジメや暴力などに対してすごく教育されているんですよ。だからテレビで面白いと思ってやっているはずのことも、見て面白いと思わない。

 それに気がついた時、教育の力って半端ないなと。こうやって人の意識を変えることができるんだったら、性教育は本格的に取り組むべきものの1つなのではないかと考えています。

――保険適用などもあり、今後不妊治療はますます注目されそうです。

 保険適用されるとなると足を踏み入れる人が多くなって、勉強する人も増えると思う。金銭面を理由に諦めていた人にはチャンスになる。保険適用する前に男性の精子を検査しましょうなどセットになるといいですよね。男性不妊ということがもっと世で広まってくれれば、女性の悲しみも減るんじゃないかなと思います。


吉田 理栄子(よしだ りえこ)Rieko Yoshida
ライター/エディター
1975年生まれ。徳島県出身。1998年早稲田大学第一文学部卒業後、日商岩井(現・双日)、旅行系出版社などを経て、雑誌「ロケーションジャパン」編集長就任。産後半年で復職するも、ワークライフバランスに悩み、1年半の試行錯誤の末、2015年秋からフリーランスに転身。主な取材テーマは人、旅、女性の働き方、子育て、地域活性など。一般社団法人美人化計画理事。