これまで1000棟以上のレトロマンションを見てきたhacoさんによると外観や躯体が時代を表すという。

「'60年代は直線的でモダンな造り、'70年代は装飾的に工夫した建物が多い。'80年代前半は玉虫色のエントランススタイルなどバブルを象徴するような煌びやかなデザインのものに。'80年代後半から'90年代に入るとコスト重視、シンプルな外観へと変わっていきました」

おすすめの物件は『秀和レジデンス』シリーズ

1968年竣工の『秀和参宮橋レジデンス』。青い屋根と白い塗り壁が特徴、アプローチのタイルも美しい(hacoさん提供)
1968年竣工の『秀和参宮橋レジデンス』。青い屋根と白い塗り壁が特徴、アプローチのタイルも美しい(hacoさん提供)
【写真】昭和の記憶が蘇るーー個性的なレトロマンション一気見せ!

「特徴はシリーズに共通する青い屋根、白い塗り壁です。建物で壁の模様やエントランスのタイルが異なっており、どの建物にも趣があります」

 同マンションシリーズは株式会社秀和が建設し、販売。最大で全国に140棟と展開していた。だが、同社はすでになく、'80年代中盤を最後に青い屋根、白い壁タイプのマンションは建てられなくなった。現在は老朽化や管理の問題などで建て替えを検討する物件も増え始めた。

 それも住人たちの意思が反映された形。昔のまま残したい、と愛着を持ち、修繕を繰り返すマンションもある一方で、経年劣化や断熱、騒音などの問題から建て替えを望む住人もいるのだ。

「当時の価値が見直され、残される建物が増えるといい。ただ、コストなどからレトロマンションのような建物はもう造られないでしょう」

 残すためには耐震性や、修繕のコスト、技術などクリアしなくてはならない課題も。

 それでもなお多くの人々を魅了するレトロマンション。そこには高度経済成長期、よりよい明日を願い生きた人々の思いがあるのかも。

お話を聞いたのは……
●hacoさん
古い建物や秀和レジデンスなどビンテージマンションを好む。2月22日には『秀和レジデンス図鑑』(TWO VIRGINS)が発売予定。同マンションを細部まで徹底取材した一冊。(Twitter→@haco_8_5 / Instagram→@lilycats25)

●櫻井幸雄さん(住宅評論家)
年間200軒以上の物件を取材、全国の住宅に精通する。新聞や雑誌などで住宅関連のコラムや記事を執筆。著書に『不動産の法則』(ダイヤモンド社)などがある。