作品によって演技の印象がガラっと変わる

 朝ドラのヒロインオーディションへの挑戦は過去6回。今回は3061人の中から選ばれたのだが、彼女に決まった理由は何だったのか。

 前出の成馬さんが説明する。

「日本では出演する俳優を決めてから脚本を書く“アテガキ文化”が根強く、極端にいえばキャスティングから入る作品のほうが多いんです。例えば、イメージが確立されている新垣結衣さんや綾瀬はるかさんは、彼女たちに合った脚本が用意され、その人しかできない役を演じるのです」

 だが、川栄は違うという。

「川栄さんの場合は作品ありきで、その一部に彼女が入り込んでいく。だから出演する作品によって演技の印象がガラリと変わります。これは脇役を積み重ねてきた川栄さんのキャリアがあるからこそできること。なにより今回の朝ドラのような、普通の女性を演じさせたら、抜群にうまい。それが彼女の強みでもあると思います」(成馬さん)

 さらには、アイドル時代に培った経験も演技に活きていると、成馬さんは続ける。

「“おバカキャラ”といわれていたころの川栄さんが発揮していたコメディーセンスが、今回の朝ドラでもすごく活きているなと感じます。安達祐実さん演じる大女優に説教されるシーンでも、しょうがなく“はぁ……すみません”と謝る姿は、とてもコミカル。これまでの出演作品では表に出してきませんでしたが『カムカム』では彼女が持つユーモアが前面に出ています」

 天性の表現力に“おバカキャラ”で培ったユーモアセンス。そして、コツコツと積み重ねたキャリアという“3つの武器”があったからこそ、朝ドラのヒロインにまでのし上がった川栄。

 もう脇役なんて言わせない。