職場の従業員らと浮気する夫 反発した妻は「まず経済力。そして離婚」

 パート社員で、中学2年生と小学4年生の2人の子どもの母親の理恵さん(仮名・39歳)は、3年前から離婚を考えている。大手機器メーカーの課長兼工場長の夫(44歳)の浮気が原因だ。

「1人ではなく複数でした。相手は夫が働いている工場の従業員の女性たち。夫の帰宅が遅いことが続いたり、休日出勤が多くなったので、おかしいと思ってスマホを覗くと、女性たちとのラインのやりとりにショックを受けました」

 理恵さんは夫の、人としての下品さに嫌気がさした。触られるのも嫌になったという。

離婚を視野に入れた話し合いをするつもりでした。でも私はパート社員なので、離婚すると経済的にきつくなります。慰謝料をはじめとして、養育費もできるだけ多く出させようとしました」

 夫の年収は1000万円に近い。子ども2人の養育費を月額最低20万円以上もらい、高校や大学進学のときには教育費を別途上乗せしてもらうつもりだった。

「ところがコロナ禍で工場が縮小してしまい、夫の収入が減少しました。しかも浮気相手の従業員たちが次々と故郷に帰ってしまったんです」

 離婚のタイミングを逃してしまったと嘆く理恵さん。さらに追い打ちをかけるように一昨年はリモート勤務で夫が自宅にいることが多く、うっとうしくなった。

「ひとつ屋根の下に一緒にいるのも嫌になったので、理由を見つけて子どもとともに近くの実家に帰りました。実家にいる間中、このままではいけない、何とかしなくてはと焦って、副業のオンラインセミナーに参加するなど、離婚後の生活のことを模索しています」

 さらに気がかりなのは、義母が孫たちを可愛がっていること。離婚となると猛反対は当たり前、ひょっとしたら理恵さんの収入が少ないことを理由に親権を夫に取られるのではと危惧しているうちに、去年の秋に夫のリモートも終わった。今は元の家に戻っている。

離婚は必ずしたいです。でも夫の会社の今後の業績が読めないので、養育費もあまり取れないかもしれません。子どもたちは夫婦仲が悪いと気づいています。しばらくは仮面夫婦で過ごすつもりです」

 コロナ禍により経済的な先行きが不透明になった。その懸念から、離婚を踏みとどまって仮面夫婦を続けるケースも、一定数存在しているのだ。

取材・文/夏目かをる 取材協力/澁川良幸