待ち時間の活用法にマッサージを

 日本メディックでは代理店39社と協力しながら「あんま王」シリーズの設置先を開拓、活用シーンを広げている。

「2012年の『あんま王』発売当初は導入先の8割近くが健康ランドやスーパー銭湯などの温浴施設。またパチンコ店やフィットネスクラブなど娯楽・スポーツ施設への導入も1割ほどありました」(裕之氏)

 2015年ごろから大型ショッピングセンターなど商業施設での導入も少しずつ始まった。2016年以降は大型コインランドリーや自動車整備工場、空港などでも導入。いずれも来場者に待ち時間を有効利用してほしいという施設側の要望によるものだった。

 こうした「スキマ時間」の活用を目的に導入されるケースはその後も急増。2018年には全体の3割近くにのぼり、最近では新幹線の待合室などにも設置されている。さらに2017年からはネットカフェやレジャー施設でプラスアルファのサービスとして設置され、2021年には全体の3割を占めるほどに。また現在はコワーキングスペースでの導入も増加中だ。

 なお「あんま王」シリーズは人の手で行うマッサージ店の店舗に置かれることもあるというから意外だ。

「じっくり手もみしてほしいと思っている人がいるいっぽうで、機械で短時間でマッサージしてもらいたい人もいます。目的が違うのでお客を取り合うこともありません。『あんま王』を置くことで集客につなげていただいています」(充晴氏)

 地域別の導入件数はほぼ人口に比例。利用金額は施設によって異なるが、「あんま王Ⅳ」の場合は12分200〜500円程度。ちなみに「あんま王Ⅳ」30台を導入している沖縄のショッピングモールでは、行列ができるほどの人気で、月間で数百万円を売り上げたという。

東京・六本木にあるショールームに展示されている「あんま王」シリーズ。消耗しやすい箇所は面ファスナーやジッパーで着脱できる設計にし、交換コスト減にも貢献している
東京・六本木にあるショールームに展示されている「あんま王」シリーズ。消耗しやすい箇所は面ファスナーやジッパーで着脱できる設計にし、交換コスト減にも貢献している

 記者も「あんま王Ⅳ」を実際に試してみた。座ると、深く広い座面に身体がふんわり包まれるような安心感。フェイスシールドにより人の視線や雑音も気にならない。背面だけでなく座面も一緒に倒れるリクライニングで、体勢がとても楽。首筋から肩、背中、腰、お尻、脚の付け根、ふくらはぎ、かかと、足の裏まで全身を満遍なくもみほぐし、思わずウトウトしてしまうほどだった。

 日本メディックは今後も「あんま王」シリーズの機能向上を追求しながら、超高齢社会へと進む日本において、マッサージチェアの利用拡大を通して健康増進のサポートを目指していくという。時代に合わせて進化し続けるマッサージチェアの今後が楽しみだ。

<取材・文/野中真規子>