実際に、深夜アニメ系ソングは海外の人々に届いているというデータもある。以下は、ビルボードジャパンが発表した「2021年に海外で最も再生された日本のアーティストの楽曲」。先に挙げた、日本での年間ランキングとは趣ががらりと変わる。

 1位に輝いたのは、日本での年間ランキングで10位だったEveで、これにLiSAが続く。4位のTK from 凛として時雨『unravel』は、2014年に放送されたアニメ『東京喰種トーキョーグール』第1期のオープニングテーマ、5位のLinked Horizon『心臓を捧げよ!』は、2017年に放送されたアニメ『進撃の巨人』第2期のオープニングテーマだ。このように、TOP10の中で8曲はテレビアニメのタイアップである。

 ちなみに、『unravel』は2021年にはSpotifyが発表した『過去5年間に海外で最も再生された日本のアーティストの楽曲』ランキングにて、1位を獲得している。世界的にみて、日本を代表するヒット曲になっているのだ。

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「2021年に海外で最も再生された日本のアーティストの楽曲」
1位『廻廻奇譚』Eve
 ※テレビアニメ『呪術廻戦』第1クールオープニング主題歌
2位『紅蓮華』LiSA
 ※テレビアニメ鬼滅の刃 竈門炭治郎 立志編』オープニングテーマ
3位『夜に駆ける』YOASOBI
4位『unravel』TK from 凛として時雨
 ※テレビアニメ『東京喰種トーキョーグール』第1期オープニングテーマ
5位『心臓を捧げよ!』Linked Horizon
 ※テレビアニメ『進撃の巨人』第2期オープニングテーマ
6位『Tokyo Drift (Fast & Furious) – From “The Fast And The Furious: Tokyo Drift” Soundtrack』Teriyaki Boyz
7位『Black Catcher』ビッケブランカ
 ※テレビアニメ『ブラッククローバー』第10クールオープニングテーマ
8位『シルエット』KANA-BOON
 ※テレビアニメ『NARUTO -ナルト- 疾風伝』第16クールオープニングテーマ
9位『ブルーバード』いきものがかり
 ※テレビアニメ『NARUTO -ナルト- 疾風伝』第3クールオープニングテーマ
10位『怪物』YOASOBI
 ※テレビアニメ『BEASTARS』第2期オープニングテーマ
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世界進出を狙えるアニメタイアップ争奪戦に?

 星野源は、2019年に上海、ニューヨーク、台北をめぐる海外ツアーを開催するなど、世界進出へ積極的な人物でもある。

 5月19日には、『喜劇』のミュージックビデオがYouTubeにて再生回数500万回を突破しており、その報告をTwitterで日本語・英語・中国語で投稿している。また、同曲のコメント欄を見ると日本語以外の投稿がずらり。確実に、日本以外のリスナーに届いていることがわかる。

 世界的人気を誇るアニメという場をきっかけに、音楽系アーティストが世界進出を図るーー。ある意味、日本の音楽業界にとって正攻法ともいえる戦略だろう。

 深夜アニメ系のタイアップは、今後、大物ミュージシャンを交えての争奪戦になっていきそうだ。

(取材・文/千歳康一)