区政は誰のためにあるのか?

 杉並区は一体どうして区民の声を無視し続けることができるのか。さらに区民の代表である区議会議員と話すことすら拒むのはなにゆえか。自分たちにとって不都合な事実が明らかになるのが困るからではないか、と思わざるをえない。

 区民の税金で成り立つ区政が、区民の声を聞かないなんて、許されない。これは福祉事務所だけの体質なのだろうか。それとも杉並区全体の問題なのか。

 区議会をネット中継で視ていると、どうも全体的に不穏である。何かがおかしい。そう感じるのは私だけだろうか。区議会ホームページから視聴できる議会の模様を、特に杉並区民のみなさんには是非、見てほしい。杉並区の福祉行政に関する議会の録画中継を見ているうちに、更にキナ臭い質問に行き当たった。

 堀部やすし議員や無所属の議員らが問題にしている、田中良杉並区長のゴルフコンペだ。

 堀部区議のホームページには「田中良区長は、以前より、区が補助金を支給している相手方など「利害関係者」にパーティー券を売り付ける形で、定期的に大規模な政治資金パーティーを開催してきました」との記載もある。 

 最近では、阿佐ヶ谷地域区民センター他3施設の指定管理業者選定にあたり、選定委員である区民生活部長と区長が、公用車を使って軽井沢まで行き、業者と宴会&ゴルフを楽しんでいたことが区議会で問題になっている。業者選定の日に特定の業者と一緒に同じコースでゴルフをする。しかも、この業者はみごとに選定されているのである。

 芝の上で、一体どんな会話が交わされたのだろうか。その宴会費と宿泊費は区の税金から支払われている。しかし、区側はどんな追及にも「問題はない」と質問を撥ねつけている。

 また、3月7日の予算特別委員会で富田たく議員(共産)が除草請負の落札事業者が6年間にわたり同じブロックで落札を続けていること、他にも学校の警戒業務、公園清掃など計13分野で同様の結果であることから、談合の疑いを追及したが、区側の回答は「毎年公正に入札している。この結果が不自然だとは思わない」だった。

 区議会で追及されては「問題はない」と次々にスルーされる深刻な問題の数々に、まるで昭和にタイムスリップしたかのような、あるいはどこかの独裁国家に不時着してしまったかのような錯覚に陥ってしまう。

 杉並区側が「問題ない」というこれらの問題には、もちろん多額の税金が使われている。問題ないかどうか決めるのは杉並区でも杉並区長でもなく、杉並区民だろう。

区議会での区長の発言

 話を本題に戻す。

 3月9日の予算特別委員会ではくすやま議員に加え、奥山たえこ議員も本件について質問してくれている。そのときに田中区長が口を挟んで「委員長のお許しをいただいて」と前置きして意見を述べている。発言内容には「基本的に扶養照会はする」という姿勢が透けて見え、厚労省の通知はまるで反映されていない様子だ。

 区長は最後に、こうおっしゃっている。

「ですから、一方的な言いぶんだけで議論を進める、役所が絶対悪いんだというような進め方、言い方というのは、もうちょっと配慮していただけないかなと。でないと、現場の職員が非常に精神的に追い詰められるような状況になりますから、そこは奥山委員も少し分かっていただきたいというふうに思います」

 申し訳ないが、それはこっちのセリフである。一方的に高木さんの事実を歪め、一区民である高木さんを悪者にして、話し合いからも逃げ続けているのは一体、誰なのか。


小林美穂子(こばやしみほこ)1968年生まれ、『一般社団法人つくろい東京ファンド』のボランティア・スタッフ。路上での生活から支援を受けてアパート暮らしになった人たちの居場所兼就労の場として設立された「カフェ潮の路」のコーディネイター。幼少期をアフリカ、インドネシアで過ごし、長じてニュージーランド、マレーシアで働き、通訳職、上海での学生生活を経てから生活困窮者支援の活動を始めた。『コロナ禍の東京を駆ける』(岩波書店/共著)を出版。