ハラスメントを訴えるのは勇気がいる

 女性議員へのハラスメントは有権者からだけではない。“敵”は議会にもいる。

「昨年末の内閣府の調査結果では、議員へのハラスメントの加害者は有権者と同僚議員からが約半々でした。議会での発言に対し、“こんなこと言うべきじゃない”と説教されたり、議会後に密室で延々と怒られたり。話を聞いていると、民間企業ではありえないような経験を頻繁に聞きます。議会は世間の感覚と大きくズレがある。相談を受けていると、民間企業で考えたら数十年遅れていると感じます。“宴会で裸踊り”なんて現代ではありえないですが、そういったことを聞いたことすらあります」(浜田さん)

 全国市議会議長会の調べによると、市議の年齢層は60~70歳未満が最も割合が高く、“高齢”だ。また、日本は女性議員が非常に少ないといわれる。全国の地方議会で“女性ゼロ”の議会は、調査年によって前後するが全体の2割ほどだ。海外では女性に一定の議席を割り振る『クオータ制』の導入が進んでいる。

「今はあまりにも女性が少ない。半数でなくとも、まずは3割を女性にするなどしていかないと、既存の権力構造は変わらず、ハラスメントが起こる状況は変わらないと思います」

山内七恵(岩手県久慈市市議会議員)
山内七恵(岩手県久慈市市議会議員)
【写真】山内七恵(岩手県久慈市市議会議員)

 前出の山内議員も、

「票を減らすことにつながるものなので、ハラスメントを訴えることは非常に勇気がいることです。女性議員に限らずですが、“ハラスメントなんて覚悟のうえで議員になるべきだ”とか“政治家はハラスメントが付き物だ”というような古い価値観を変えていきたい。プライベートへの干渉や性的な要求をされる理由なんてどこにもない。若い世代や女性がもっと多く選挙に出てきてもらって変えていかなくてはならないと思います」

 ハラスメント被害の指摘および“なくす”活動を被害者が行っている現状がある。

「ハラスメントをしてくる人は、無自覚な場合も多いです。そのため、それがハラスメント行為だと指摘されない限り、気づかないこともあります。加害行為の指摘は被害をなくすために重要ですが、それを被害者がすることは負担が大きい。だからこそ、周りの人が一緒に“アウト”な行為を加害者に伝えることが必要です。また、各議会でハラスメントに関する政治倫理条例を制定するなど、ルール作りをすることは大きな抑止力になると思います」(浜田さん)