1996年に結成した男性ダンス&ボーカルグループDA PUMP。それぞれが卓越したスキルを持つメンバー6人の中でも“最強のダンサー”といわれる男がいる。その名はKENZO。グループとして活動しながらも前人未到の8年連続ダンス世界大会優勝を果たし、男性アイドルグループ・INIのトレーナーとしてもその名を轟かせている。ダンスにかける情熱は“熱すぎる”KENZOのルーツに迫った―。

前人未到の8年連続世界大会優勝

 2022年6月11日、千葉・幕張メッセに向かって、幅広い世代の人たちが足早に歩いていた。推しメンバーのツアーTシャツを着る女性たち、ストリートファッションの男性ファン、ダンスに夢中な小中学生、杖でリズムを刻むおばあちゃん─。

 今日は、DA PUMP25周年のデビュー記念日、アリーナツアー「DA POP COLORS」最終日だ。

 会場が暗転するとステージにスポットライトが集まり、真っ白な光に包まれて、ボーカルのISSAを含む6人が白い衣装を着て登場した。

「いくぜ!幕張―!」

 ファンの熱狂が大きな拍手となってメンバーを包み込む。

6月11日に幕張メッセで行われたDA PUMPライブ

 メンバーの中で最も若いKENZOは、ステージのセンターでISSAの真後ろに立っていた。目の前には12歳のころテレビで見ていたISSAの背中。あれから25年がたち、今ステージを共にしている。ISSAの向こうにはどこまでも続くペンライトの海が見える。

 アンコール含めて2時間半のライブの最後、KENZOはメンバーからファンへの挨拶の口火を切った。スクリーンにアップで映し出されたその表情は、涙をこらえているように見えた。

「今までいろんな思いをして過ごしてきました。今日をちゃんと迎えられるだろうかって昨日の夜もずっと考えていた。その不安を、皆さんの笑顔と拍手とペンライトが全部忘れさせてくれました。本当にありがとうございます」

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 KENZOがDA PUMPに加入したのは、2008年12月。KENZOは、それ以前から国内外のダンスコンテストのタイトルを数多く獲得し、ダンスシーンの歴史を塗り替えてきた。次々と偉業を成し遂げ、世界を舞台に活躍。その実力を認められ声がかかったが、当初、その誘いを2度断っている。

「正直言って僕は芸能界に興味がなかったんです。当時は、何よりダンスを極めたかった。でも、最後、ISSAさんとお会いしたときの言葉で、その場で決心しました」

 ISSAはそのとき、KENZOと長時間話した末にこう言った。

「俺たちもストリートダンサーだった。君の可能性を信じている。KENZOの力が必要だから、もしよかったら力を貸してくれないか」

 DA PUMP加入後も、KENZOはグループでの活動と並行して、ダンスで世界への挑戦を続けていた。

 マネージャーの大谷剛さんは、グループが不遇の時代からKENZOをいちばん近くで見てきた1人だ。

「全てにおいて、ダンスへの愛が彼を突き動かしています。ダンスに関して驚くほどストイックで熱い。いつも感心のひと言でしかありません」

 KENZOは人生のほとんど全てをダンスに捧げてきた。実際、DA PUMP加入後にも前人未到の8年連続世界大会優勝を果たし、今や世界中のダンサーからリスペクトされる存在だ。

 最近は、若手アーティスト育成オーディション企画のトレーナーとしてもその経験と実力を発揮している。グローバルボーイズグループのJO1を輩出したオーディション番組第2弾、『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』からは、昨年11月、INI(アイエヌアイ)が誕生した。

 そのハイライト動画で、KENZOの発する言葉にダンス、人間への思いがあふれていると話題になっていた。

 練習を十分しないままにダンスを披露したチームには、「エンターテイメント舐めるなよ。頑張れよ。練習しろよ。できる環境じゃねえやつだっていっぱいいるんだよ」

 と、悔しさのあまり涙を流し感情を爆発させた。

 ダンス未経験から人一倍練習し、確実に力をつけた練習生には、目を丸くして驚き、その努力を心から讃えた。

「自分を信じることができたんだな。まだまだダンス的には足りない部分がたくさんあるかもしれないけど、人の心を動かすダンスだよ」

 KENZOがダンサーを育てるとき、自分が踊るとき、大切にしていることがある。

「ダンスを始めたころからずっと、よりカッコいい、よりすごいダンスを追求してきました。だから世界大会にも挑戦してきたし、それさえも通過点だと思ってきた。でも、『U.S.A.』のヒットが、人生の大きなターニングポイントになった。こんなにもたくさんの人を笑顔、幸せにできるダンスがあるんだなって本当に驚いたんです。

 今は、ダンスって、踊りで自分を表現することだと思ってる。生まれ持った自分、そのたった1つの存在を表現すること。ダンスを通してたくさんの人に幸せになってほしいと思って活動しています」