政治や差別意識を掘る笑い

 今年、フジロックが開催される1か月前に帰国したSakuさん。すぐに芸人のせやろがいおじさんと一緒に全国11か所を回るツアーを敢行。その集大成として、7月22日には東京・丸の内の「コットンクラブ」で舞台に立った。

今年、東京・丸の内のコットンクラブで単独ライブを開催した。(撮影/伊藤和幸)
今年、東京・丸の内のコットンクラブで単独ライブを開催した。(撮影/伊藤和幸)
【写真】フジロックMCで攻めた笑いで会場を沸かすSakuさん

「ずーっとこの場所でやりたいと言っていて、夢叶っちゃったね」

 マイク片手に話し始めると、もう止まらない。シカゴで毎日会う名物ホームレスとのウイットに富んだ会話。海外公演での失敗談。銃規制に絡めた中学時代の思い出話……。テーマを次々変えて、100人ほどの観客をぐいぐい引き込んでいく。

 終わったばかりの参院選を念頭に、政治的な話題もさらりと触れる。

「僕、世の中に2種類の嫌いな人間がいるのよ。まず人を支持政党でジャッジするヤツ。あとは自民党に投票するヤツ!」

 拍手と笑いで場内が沸くと、こう続ける。

「ここで拍手が起きたら、これ、集会やから。スタンダップコメディの魅力は隣の人と支持政党が違っていても、それを笑えることだからね。今から僕がカウントダウンするから、せ~ので支持政党を叫ぼうか。それで席替えするから(笑)。いやウソ、ウソ!」

 “ギリギリの線”を狙ったネタも披露する。シカゴでは出番が終わると日本語を学ぶアメリカ人によく話しかけられるという内容で、Sakuさんが「ワタ~シハ~……」と外国人のアクセントをマネすると笑いが起きた。その様子を見て、こう続ける。

「アメリカで今、これをやったら僕は一発でクビ。一生分の仕事をキャンセルされます。

 でもさ、家に帰ってシャワー浴びながら、俺はこういうネタで笑うんや、私にはこんな感情が内包されてんのやと気づくことができるからこそ、こういうコメディのライブ会場で、皆で笑うことは非常に意味のある尊いものなんだと思います。ここに集まっている皆さんに、もう一度拍手をお願いします!

 そう言うと、ひときわ大きな拍手が巻き起こった。

 Sakuさんが次に目指すのは『サタデー・ナイト・ライブ』などの人気トーク番組で司会をすることだ。ハリウッドのコメディ映画にも出演したい。どちらも有名コメディアンたちがたどった道だ。

 その勢いで日本に逆輸入され、1万人を集めて武道館で公演をしたいとも。

「もう、毎日が小さな挫折と回復の繰り返し。やめたろうかなとか、もう無理、きついわーということばっかりです。でも、とにかくできるまでやり続ける。できてないことでも、『今やっている途中なんで』と言い続けます。だから、死ぬまでにできなかったら、お葬式でボコボコに言ってください(笑)」

 まだ30歳。これから何をやってのけてくれるか、楽しみだ。

取材・文/萩原絹代(はぎわら・きぬよ) 大学卒業後、週刊誌の記者を経て、フリーのライターになる。'90年に渡米してニューヨークのビジュアルアート大学を卒業。'95年に帰国後は社会問題、教育、育児などをテーマに、週刊誌や月刊誌に寄稿。著書に『死ぬまで一人』がある。