目次
Page 1
ー 北海道在住の絵本作家、観光PRキャラクターを
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ー 楽しいか、役に立つか、描きたいか
Page 3
ー コロナ禍がリセットのきっかけに
Page 4
ー 桜木紫乃らとのタッグ
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ー 段取りのほとんどを自力で
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ー 都会にはなじめなかった
Page 7
ー 「お金」という条件はない ー 「おひとりさま」が楽しい

 北海道の駅にあるポスター、IC乗車券イラスト、大型商業施設の壁、店頭のタペストリーなど……。道内のいたるところにあふれる愛くるしいキャラクターを生み出すクリエイター。

 北海道のメディアからオファーの絶えないご当地タレントとしても活躍中だ。周囲の誰からも愛される一方で、ずっと“おひとりさま”暮らしを楽しんでおり、恋愛にほとんど関心がなく、今後も結婚するつもりはないと断言する。

「独学で絵を描き始めた」という彼女の現在に至る道のりと、愛犬の死を乗り越えて気づいたこと──

北海道在住の絵本作家、観光PRキャラクターを

《小心者で、泣き虫。おとなしい性格だけど、好奇心はとっても強い》

 北海道の観光PRキャラクター『キュンちゃん』を紹介するプロフィール文には、こう書いてある。エゾシカの被り物をした、愛くるしいけどどこか孤独な雰囲気も漂わせるエゾナキウサギのキュンちゃん。

 エゾシカも、エゾナキウサギも、北海道に生息する“ご当地動物”だ。キュンちゃんが誕生したのは、'11年のことだった。

 北海道は、それぞれのご当地をイメージさせる『ゆるキャラ』であふれている。例えば、ハッカ生産の世界シェア80%以上を誇る北見市のキャラは『ミントくん』。北海へそ祭りをモチーフに誕生したのは、富良野の『へそ丸くん』。

 函館で活躍する『イカール星人』とあっては、そのグロテスクな風貌で子どもたちの人気を獲得できているのか若干の不安が残るものの、これだけの“ゆるキャラ展開”は、国内において有数の観光スポットを擁する北海道ならではの現象だといえる。

 いくつものゆるキャラが点在する中、北海道全体の観光の魅力をアピールするご当地キャラの存在を検討していたときに誕生したのが、キュンちゃんだ。道外でのイベントを中心に登場した結果、知名度は本州から広まり、やがて道内に流れていく傾向にあったという。

 '20年から、キュンちゃんがナビゲートを務めるLINEアカウントがスタート。主に観光情報を発信し、北海道の魅力を道内外にアピールする役割を果たしている。いまや札幌市をはじめ道内の主要都市を歩いていると、さまざまな店のタペストリーにキュンちゃんがいて、こちらをじっと見つめている。キュンちゃんを避けて過ごすほうが難儀するくらいだ。

 エゾナキウサギは岩間の陰などで生活する、体重150グラムほどの小動物。キュンちゃんの風貌は飄々としていながらも、ややいたずらな愛嬌がある。このすました表情の中にも個性的なかわいらしさが広がるキャラクター、誰かに似ていると思っていたら、すぐに特定できた。キュンちゃんを考案し、イラストを手がけた、そらだった。

「おとなしい性格だけど、好奇心はとっても強い」ところが、まさに彼女の素顔と一致していたことに、驚きつつも得心している。どんなにフラットであろうとしても、描き手の人物像は必ず絵に宿るのだ。

 北海道在住の絵本作家でイラストレーター。テレビ番組に引っ張りだこで、道内メディアではタレントとしても活躍。イベントも多数企画し、絵本の読み聞かせ会では2000人を集客したこともある。

 IC乗車券『Kitaca』のキャラクター『エゾモモンガ』やグリコ80周年の記念でビスコのパッケージに起用された『しろくまくん』、民族共生象徴空間ウポポイPRキャラクター『トゥレッポん』などを手がける、北海道を代表するクリエイターのひとりだ。