次に血圧について。

基準値を超えた結果、必要ない薬を出されている人も

「私自身、健康な2500人の検査データを集めてさまざまな分析をしました。そのうちの1つが血圧。メタボ健診において、国が定めた基準値で最高血圧が130以上、または最低血圧が85以上はリスクあり。

 この“基準”を私が集めたデータに当てはめると、51%もの人が該当してしまいます。メタボ健診を受けた2人に1人が“異常”となる。健康と思われる人を集めてこんなに多くの人が“異常”となるなんて考えられますか?

 異常の結果は薬の処方だ。

「血圧の薬を飲んでいる人は、年齢が上がるほどその割合は高くなり、60代は3人に1人程度、70歳以上になれば2人に1人程度が服用しています。判定基準がそうだから。血圧に関して、死亡率との関係を追跡調査した研究はあるにはありますが、BMIのように“この数値から将来的に健康被害を及ぼす可能性が高い”というような明確なデータがない」

血圧の薬を飲んでいる人は、60代は3人に1人程度、70歳以上になれば2人に1人程度が服用している(写真はイメージです)
血圧の薬を飲んでいる人は、60代は3人に1人程度、70歳以上になれば2人に1人程度が服用している(写真はイメージです)
【写真】健康診断の数値には気にする必要のない異常値がある?

 とはいえ、将来起こりうる病気に関連する“基準”を示した研究はほかにもある。

血糖値です。死亡率との関係を調べた人はまだいないのですが、わかりやすいのが目の障害との関係です。空腹時の血糖値が高い人ほど、最悪の場合、失明に至る網膜症の発生率が上がる。

 このデータの信頼性は、別の国の複数の集団で調査したデータがほとんど同じだった点にあります。グループ同士互いに無関係。結論は、空腹時の血糖値が99〜108を超えたあたりで、どの調査も網膜症の発生率が上がっている。これが、いま世界的に基準値として使われています」

 ここまで述べてきたような、基準値を超えたら怖い数値もあるが、それほど心配するほどでもない“異常値”もある。

例外もありますが、ガンマGTPが高い人のほとんどがたくさんお酒を飲む人です。これがかなり高いと肝機能障害などと診断され、病院によっては薬が出されます。しかし、お酒を控えれば基本的に下がります。尿酸値も同様です。

 日本は健康診断が盛んですから基準値を超えて薬を出されている人が多い。例えば尿酸値が高いと言われた人は主治医と相談して、本当に薬が必要か、生活習慣の改善ではダメかと聞いてほしい

 自覚症状が出ているようなマズい状況は別だが、そのようなケース以外の多くの検査値の異常は自分の努力、生活習慣を改めることでかなり改善されることが多いという。

「薬には必ず副作用があります。検査値に振り回されず、薬を飲む前に相談してほしいですね。質問に答えてくれないような医師ならほかの病院へ行くべきです」