塩コショウもせずにステーキを焼いたり、作り置きの夕食をのびやすいうどんにしたり。子どもが壁に落書きするのをやめさせるために「ここに書いちゃダメ」と自分が壁に大きく書いてしまった、というのもある。なお、筆者がいちばん好きなのは、役所で書類に署名する際、

「私の名字ってなんだっけ」

 と、家族に聞いたというもの。結婚で「松本」から「小園」に変わったわけだが、夫が「ヒロミ」の名で活動しているというのもあって、ついつい忘れるのだろう。また、あまり知られていないが、彼女はひどい片頭痛持ちだという。今月には、それがテーマの医療系ウェブ講演会にも出演する。そんな話ですら、ヒロミならほどよく笑いにかえられるのではないか。

子どもに「俺の女に何言ってんだ」

 なにせ、ツッコミを担当したB21スペシャルはダウンタウン、ウッチャンナンチャンとともにお笑い第三世代を牽引したグループ。彼女の天然ボケはツッコミのプロと結婚したことで、夫婦漫才のような面白さへとつながったのである。ただ、天然キャラが行きすぎることもある。'17年には、立ち入り禁止の線路内を歩いている写真をブログに投稿、鉄道営業法違反の疑いで書類送検されてしまった。

 このとき、ヒロミは『ワイドナショー』(フジテレビ系)に出て、謝罪。

「本人は悪意はなく、あのとき気づかなかったかもしれないが、駄目なものは駄目」

 と、たしなめた。とまあ、一緒にいても離れていても、ツッコミにフォローにと忙しいわけだが、それはヒロミにとって、当たり前のチームプレーなのだろう。芸能活動を休んでいた時期、伊代が「隣で笑っていてくれた」ことに感謝しているという。休んでいた理由については、親友だった放送作家の病死によるショックなども関係していたとされるが、妻の明るさは救いになったはずだ。

トップアイドルの1人として一世を風靡した松本。その天然ぶりも人気の秘密だった!?
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 そんな妻に対する愛も、ヒロミはてらいもなく口にする。今年5月の『徹子の部屋』(テレビ朝日系)では、伊代がそれを明かした。息子たちが反抗的なことを言っても、

「俺の女に何言ってんだ、とか言って。なので、ヒロミさんがいるときは、ふたりともおとなしくしてくれます」

 とのこと。不倫などへの風当たりが強くなった今、こういうタイプの男性は、好感を獲得しやすい。今年3月には、妻の天然ぶりや夫婦愛をネタにした『神様との約束』という曲までリリース。歌番組にも出演した。

 先に夫婦漫才みたいだと書いたが、笑わせておいてちょっと泣かせたりもするあたりは、吉本新喜劇のようでもある。新喜劇といえば、関西のエンタメ界に長年君臨する最強のコンテンツ。伊代とヒロミのふたりも、芸能界最強夫婦のひと組なのだ。


寄稿:ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)