関口被告が現場に戻った理由

「本気で暴行はしていません。氏家さんを助けたいので手加減していました。ただし、兄弟と呼び合っていた共犯者に“本気で怒っている”と見せるつもりだった」(被告人質問での関口被告の証言)

 関口被告は怒っていたのか。

「共犯者と話しているときの氏家さんの返答があいまいだったので、だんだんイライラしてきました。氏家さんは、自分が提案した手助けの提案を無視し、『詐欺でもなんでもするから助けてくれ』と言っていたんです。俺が詐欺をするような人間に見えるのかと思いました」(関口被告の証言)

 その後、氏家さんのトラブルの元になる木更津グループのDが合流した。暴行の結果、肋骨の骨折は38ヶ所。上半身には内出血も多くできた。その後、屋上から逃走するが、119番通報などはしなかった。

「(通報などの助けを呼ぶことは)考えていませんでした。救急車を呼ぶと警察も付いてきます。そうすれば、みんなが捕まってしまう」(関口被告の証言)

 ただ、まるで自分だけが逮捕されるように、現場に戻り、実際に警察に逮捕された。どうして自分だけの責任にしようとしたのか。

「友達を守れなかったという気持ちと、CやDには仕事があったり、彼女がいて、大切なものがあります。しかし、自分には大切なものがない、という気持ちでした」(同)

 助けることもできず、救命もせずに屋上に放置した。その結果、友人の氏家さんを死に至らしめた。警察に逮捕されるとき、何を考えていたのか。被告人質問で関口被告はこう話していた。

「なんでこんなことになってしまったんだろうと後悔していました」

《取材・文/渋井哲也》