楽してる自分はなんかムカつく

「ご存じのとおり、かつての僕は仕事がなかったものですから(笑)。どの作品でも数シーンの出番しかもらえず。それは自分の実力不足なんですが、そんな鬱屈している若手時代に演劇は、生きていく支えになりました。その道を開いてくれたのは間違いなく、河原さん。その人が新たなチャレンジをするうえで“一緒にやろうぜ”と言ってくれるなら、しんどそうだと思いながらも、やるっきゃない。本当は超・楽して生きていきたいんですけどね(笑)」

 取材は『石子と羽男-そんなコトで訴えます?-』のクランクアップ3日後。10月28日からは『仮面ライダーBLACK SUN』(Amazon prime video)の配信も控えている。そして、現在は本作の稽古の真っ最中。その忙しさは想像に難くない中、決して楽なほうを選ばない理由を聞くと、

「なんかムカつくじゃないですか、楽してる自分って。役者、芸能人、エッセイスト……とにかく人前で何かしらをさらす中村倫也って、何て言うんだろう? 屋号だと思っていて。僕個人は楽したいですけど、コイツ(中村倫也)に楽させて、ダサいなと思わせるわけにはいかないので。だから、やる。それだけです」

 緩さと柔らかさをまといつつも、芯にはブレることのない毅然とした哲学が。