もうひとつ、コロナ禍で目立つようになったのが夫のモラハラ、精神的な暴力を理由とした離婚だ。

特に相談が多いのが、昭和40年前後生まれのバブル世代ですね。男性側が昭和の男尊女卑的な価値観のまま、妻を怒鳴りつける、あるいは理詰めで小言を言う。お金を自由に使わせない。そんな夫がコロナ禍でずっと家にいるようになって、耐えられなくなったというパターンです」

 ただし、忘れてはならないのが、離婚後の生活費問題。住居費に光熱費は今までの生活費を人数割りにした以上の額がかかるし、60歳未満なら国民年金保険料も払わなくてはならない。これらをどうするかが重要なのだ。

婚姻費用、財産分与、年金分割を知っておこう

「すでにフルタイムで働いていれば、離婚に踏み切りやすいでしょう。ただ、熟年女性は専業主婦が当たり前という世代。再就職できても、50代以降につける仕事は給料などの条件がよくない。そのため、別居や離婚にあたっては、夫側からどんな費用が受け取れるか見積もっておくことが必須になります」

 離婚で受け取るお金といえば、まず思いつくのが慰謝料だ。ただ、この慰謝料が、実はあまりあてにできない。

「不倫や身体的な暴力など、相手に明らかな非があっても、200万~300万円くらいにしかなりません」

 ただし、別に受け取れるお金があるという。例えば、別居した場合に受け取る、離婚が成立するまでの生活費=「婚姻費用」もそのひとつ。

「金額は、家庭裁判所が示している算定表をもとに、夫婦の年収、子どもや住宅ローンの有無などで決めます。夫が年収500万円、妻が年収ゼロ、子どもなしなら、月額6万円程度です」

 なお、夫側が婚姻費用の支払いを拒むことはできないが、例外はある。

「妻が不倫をして家出をするなど、婚姻関係を破綻させる原因をつくっている場合は、受け取れません」

 そして離婚が成立すれば、それまでに築いた資産を分け合う「財産分与」を行うことになる。専業主婦も、「家事や育児を通じて財産形成に役立った」という観点から、夫婦で築いた財産の半分を受け取ることができる。また、夫の年金のうち、結婚期間中の厚生年金部分の半分にあたる権利を「年金分割」で得ることもできる。