熟年離婚の3つのケースを原口先生がアドバイス

【A子さん(62)のケース】

【相談内容】
 性格の不一致で離婚を希望。持ち家があるが、まだローンが残っている。売ってもトントン、もしくはマイナスも考えられる。その他の財産といえば夫が相続した土地があるくらいで、預貯金はあまりない。

【原口先生のアドバイス】
 夫が相続した財産は、夫婦の共有財産には含まれないので、財産分与の対象にはなりません。そして、夫婦の共有財産である持ち家は、売ってもローンの残債を払ってトントン……となると、財産分与はなし。

 夫がサラリーマンで退職金がもらえる場合は、結婚期間に応じてその半分がもらえますが、離婚後の長い人生をまかなえるほどの額にはならないでしょう。もちろん、精神的苦痛からの解放のために、自活する覚悟があるなら、離婚しましょう。

【B子さん(55)のケース】

【相談内容】
 夫の不倫で離婚を希望。夫は自営業で借金もある。国民年金基金や民間の個人年金保険には入っているが夫名義でしか入っていない。自身は結婚後、パート勤務で厚生年金期間は短い。

【原口先生のアドバイス】
 自営業の場合、財産を会社名義にしていたり、蓄えるよりも事業に投資している場合が多いので、財産分与は期待できないケースがほとんど。年金もサラリーマンの方に比べて少ない傾向に。

 慰謝料は多くても200万〜300万円程度。慰謝料、財産分与、年金分割、いずれも期待はできないということです。離婚後、自活が難しいと考える場合は、夫の不倫を許すかわりに、妻名義での貯蓄性の保険に入ってもらう、生活費を増やしてもらうなど、妻の財産を残すような工夫をするというのもひとつの手です。

【C子さん(55)のケース】

【相談内容】
 夫にDV傾向があり、離婚を希望。家に成人した子が一緒に住んでいるが、独立する様子もなく、食費、光熱費など家計は親が負担。分譲マンションをもらえたとしても、共益費、固定資産税などを払っていくのは難しいのではとも思う。

【原口先生のアドバイス】
 子どもは、もう成人しているのですから、まずは自分の身の安全優先で考えましょう。DVの状況が急を要する場合は、被害を受けたらすぐに警察に連絡しましょう。シェルター(DV被害者の避難先)で相談にのってもらうという方法も。自分でなんとかしたい場合は、まずは仕事を探しながら、親族や専門家に相談を。仕事に就いていない場合は、賃貸で部屋を借りること自体が難しいのが現実です。

教えてくれたのは……

円満離婚弁護士 原口未緒さん
10年におよぶ両親の離婚問題、自身の4回の離婚経験をふまえ、離婚に悩む女性に寄り添い、女性を応援する法律事務所を開設。著書『こじらせない離婚』(ダイヤモンド社)にて、前向きに離婚するためのプロセスを紹介している。

取材・文/吉田きんぎょ