目次
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ー 中森明菜の高まる「伝説性」
Page 2
ー 中森明菜の「プロデュース力」
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ー 中森明菜が渇望される理由

中森明菜ブーム」とでも言える状況が続いている。

 経緯を追うと、まず4月30日にNHK BSプレミアムで『中森明菜スペシャル・ライブ1989リマスター版』が放送され、7月9日にNHK総合で再放送。その流れで、7月15日にはBSプレミアムにて『中森明菜スペシャルライブ 2009・横浜』も放送された。

当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

 そして8月30日、中森明菜本人がツイッターを更新。貼られた画像には――「ゆっくりになってしまうと思いますが、歩き出していきたいと思いますので、どうか見守っていただけると嬉しいです」

 このツイッターが盛り上がり(本稿執筆時点で「いいね」が49.3万件)、併せて、今年の紅白歌合戦への出場の噂が一気に広がり、マスコミが大騒ぎとなった。

 11月4日には、BS-TBSで特別番組『中森明菜デビュー40周年 女神の熱唱!喝采は今も』が放送され、TBSの持つ、中森明菜の貴重な歌唱映像がふんだんに流されたのだが。

 しかしながら、ツイッター・アカウントは、その後、更新がなく、また11月16日に行われた紅白の出場者発表にも、彼女の名前はなかった(「特別企画」での出場の可能性は残っているが)。

 にもかかわらず、「令和4年の中森明菜ブーム」は収まりそうにない。多くのメディアが中森明菜について報じ続け、またファンの側も、いつ活動を再開するのか、果たして紅白には出場するのかと、盛り上がり続けている。

 というわけで今回は、デビュー40周年となる今年、なぜ「中森明菜ブーム」が降って湧いたのか、その理由の本質には、音楽家・中森明菜のすごみがあるのではないかという考えを述べてみたい。

中森明菜の高まる「伝説性」

「令和4年の中森明菜ブーム」の生成要因として、まずはその「伝説性」がある。定期的に活動と話題を提供する松田聖子や小泉今日子に対して、「17年末のディナーショー以来、再び表舞台から姿を消したまま」(『週刊朝日』2022年9月16日号)という状態にもかかわらず、否、そういう状態だからこそ、「伝説性」が高まり、話題が沸騰し続けているのだ。

 言い換えると、日々情報を拡散させるのではなく、情報を遮断することで「伝説性」を高め、イメージや鮮度を維持するという難題に成功している、極めて珍しい例と言えるだろう。