義眼の作成工程

 眼球と同じような球体で、眼窩(がんか)に押し込む……というのが、義眼になじみがない人たちのイメージだろう。

 だが実際は、“目”として見える部分に合わせて、ゆるやかな三角形、もしくは半球だ。

 義眼の素材のほとんどはアクリル樹脂で構成されおり、団十郎さんの工房では瞳孔や虹彩、強膜(白目)をパーツ事に作成する。

 白目の色も、現存する眼球や年齢、好みに合わせて調整する。よりリアルさを追求するため血管も表現するのだが、こちらは赤い糸をほどいて繊維にしたものを散らす。

 表面は透明のアクリル樹脂でコーティングして、固まったら細かな傷も残さないようにひたすら研磨し、滑らかさとツヤを出す。

作成のようす。依頼者の瞳の画像を見て確認しながら、数日かけて作り上げる
作成のようす。依頼者の瞳の画像を見て確認しながら、数日かけて作り上げる
【写真】SNSでも話題になった幻想的な「星空義眼」

 完成した大きさは直径2~3センチほどで、厚みや形状にもよるが重さは3~5グラム。大きな義眼が必要で重さの改善が求められる場合は、中空義眼を作成することもできる。その場合、中空構造のため水にも浮く。

「当方の場合オーダーメイドなので、一点一点ご利用者様の眼窩形状合った型で作成いたします。まず眼窩の形状を確認し、そしてご利用者さんのご要望や好みをじっくりうかがい、義眼のパーツの色を決めていきます。

 色味も大切なのですが、義眼を使用するにあたってまず気にすべきなのは装着感と視線なんですね。うまくフィットすると、まぶたの開き方もスムーズになりますし、目やにも出にくくなります。そして、横から見たときの厚みが不自然ではないかといったことや、納得できる視線になるかどうかも確認します。

 義眼ユーザーはこの視線が定まらないことにコンプレックスを持つ方が多いのです。特に人と正面から顔を合わせることを気にされる方はかなりいて、そのためオンライン会議が苦手だという方もいらっしゃいます。私もその一人でした。

 私自身の経験からも視線のずれ、開き具合、装着時の違和感は日常生活のストレスにもつながるため、納得いただくために時間をかけてご依頼者様と確認を重ねます。

 最終的な結果はご使用者の義眼床の状態に左右される要素も大きく、100%ご満足いただくことは義眼単体では叶わないことは事前にご理解いただけるようにご説明させていただいています。

 身体にフィットした義眼、義眼床の状態など、条件が揃うことで眼球を動かす筋肉の動きがうまく伝わると、それほど気にならない視線運びが期待できます。以前、視線にコンプレックスを抱いていたため写真撮影が苦手だったというご依頼者様がいたのですが、視線が改善された義眼を使ってから『自然体で家族と写真を撮ることできるようになりました』という感謝の言葉をいただきました」

 顧客の手に渡るまでには、最初のカウンセリングから調整などを含めて約1か月ほど。価格は通常のもので12万円から。特殊加工や追加の加工が必要な場合は16万円からとなっている。