ニーニーと並び、クズっぷりで記憶に残るのが'21年度後期放送の『カムカムエヴリバディ』で濱田岳が演じた算太。家業の和菓子店を妹に任せ、自身はダンサーを目指すと宣言。借金を重ねては失踪を繰り返した。

「算太はクズ兄という意味で『ちむどんどん』のニーニーと一緒に語られることが多いキャラクター。でも両者には大きな違いがあって、この役は濱田さんの大きなステップアップに。算太はハタ迷惑な存在ではあるけれど、ある意味、物語の最重要人物でもありました。“三世代ヒロインの100年にわたる物語”という設定の中で、家族をつなぐ役割を担った。少年時代からお爺さんになるまで違和感なく演じきり、芸達者ぶりを改めて認識させられました

「沖縄にはリアルにいる」

 '19年度前期放送の『なつぞら』で岡田将生が演じた兄・咲太郎もクセ強め。ヒロインのなつ(広瀬すず)と生き別れになるが、念願叶い再会を果たす。その喜びもつかの間、借金に盗品事件、果ては逮捕と周囲を騒がせた。

「咲太郎は根が悪人ではなく、借金にしても恩人である踊り子のお店を取り戻したいという善意があってのこと。だけど彼がひとたび行動を起こすと必ず騒動になる。典型的なトラブルメーカーで、常に周りを振り回していました」

 強引な展開に視聴率の低迷と、何かと話題が尽きなかったのが'12年後期放送の『純と愛』。ヒロイン・純を夏菜が、その兄・正を速水もこみちが演じたが─。

「正は女癖の悪いプレーボーイで、あげくの果てに婚約者を放り出し、妊娠した恋人と駆け落ちをしてしまうクズ男。ただそれ以前に、疫病神のような純や武田鉄矢さん演じる父の善行をはじめこの作品の登場人物はムリな設定だらけ。正はクズではあるけれど、震災の日に純と愛に黙とうをしようと声をかけたりと、ほんのワンシーンだけで“いいところもあるんだ”という気にさせられました。ほかのキャラに比べれば、女癖が多少悪くても明るい正のほうがマシに見えました

 遡れば、'01年前期の『ちゅらさん』でゴリが演じた兄・恵尚も強烈だった。お調子者の風来坊で、ご当地ゆるキャラ“ゴーヤーマングッズ”を作るも大失敗。大量の在庫と借金を家族に託し、家のお金を持ち逃げする。

「恵尚もそうですが、一攫千金を狙って失敗、というのが朝ドラのクセ強兄の定番パターンのひとつ。また、『ちゅらさん』、『純と愛』、『ちむどんどん』の3作品はいずれも沖縄が舞台。『ちむどんどん』の放映当時、“今も沖縄のお兄ちゃんにはリアルにあること”と沖縄の方たちがSNSに書いていました。しょうもない兄だったけれど、物語自体に“なんくるないさー”の世界観がしっかり確立されていたので、舞台となった沖縄では印象があまり悪いほうに傾きませんでした」