レギュラー枠への出演と同時に課せられる口封じ。おしゃべりを本業とする噺家に沈黙を強いるとは、何かと日テレサイドも酷なことをする。 

 沈黙だけではない。日テレサイドは、噺家にある種の「嘘」さえも強要しているのである。

涙ながらに謝罪した宮治

 演芸事情に精通したライターが、桂宮治が起用された際の情報を元に、裏事情をつまびらかにする。

「『笑点』の収録は基本、隔週土曜日に行われます。宮治さんクラスの売れっ子になると、先々の土曜日は地方の落語会などに顔付けされているわけです。それを本人は断らなければならない。通常、落語家が出演を断る場合は、自分と芸歴・人気が同等、あるいはそれ以上の芸人に、いわゆる“代演”をお願いして、主催者には迷惑をかけないようにするのが習わしです。

 ところが宮治さんが当時、落語会の主催者に断りを入れた際の言い訳は『すみません、すみません、ダブルブッキングしてしまって出られません、すみません』ということでした。ダブルブッキングは落語家の場合、なかなかあり得ないのです。落語会のスケジュール管理は手帳に書き込めばすむので、とても単純だから。宮治さんは恥を忍んでダブルブッキングだと嘘をつき、『笑点』のメンバーが発表された後に、主催者の元を訪れ涙ながらに謝罪したそうですよ」

 多少意地悪な見方をすれば、日本テレビサイドは、宮治に対して“嘘をつかざるを得ない状況”を作り出したことになる。

 新メンバーになり、謝罪すれば、落語会の主催者もそれじゃ仕方ない、ということになるが、宮治目当てにチケットを購入していた人も、巻き添えを食うことになる。

 そう考えると、新メンバーの発表を引っ張り続ける『笑点』のやり方は、ちょっとばかり罪深い。

〈取材・文/薮入うらら〉