自分が芸能界入りを夢見ていたからでしょうか、お母さんはなぎこの弟と妹に、その夢を託すかのように児童劇団に入れます。お母さんはなぎこに「おまえは醜い」と教えこんでいたために、子役に何の興味もなかったのですが、劇団側はさすがプロ。なぎこに可能性を感じてスカウトします。オーディションに合格すれば、いつもはなぎこに興味を持たないお母さんがほめてくれるので、それはもうがんばってしまう。仕事が不安定なお父さんの代わりに子役としてお金を稼ぎ、家事をしないお母さんの代わりに弟、妹のために世話をする。

 この頃のなぎこは「頼りにされること」が嬉しかったそうです。それでは、お母さんは子どもたちを放って何をしていたかというと、恋愛でした。なぎこのお父さんと別れた後は、なぎこが出演した番組の撮影スタッフと再婚しましたが、今度は不倫関係を経て、資産家の男性と再々婚しています。

今回の離婚報告は事実を述べるにとどまった(遠野なぎこインスタグラムより)
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摂食障害に陥った理由

 十代も後半となり、グラビア撮影を経験するようになると、なぎこは自分の体形が気になってきます。そんななぎこに、お母さんが教えたのは「吐くこと」でした。お母さんもこのようにして、細い体を保っていたのだそうです。なぎこは次第に摂食障害に陥っていきます。新人女優の登竜門、連続テレビ小説『すずらん』のヒロインを射止めた頃には「恋多きオンナ」を通り越した恋愛依存も始まり、楽屋に意中の男性を引っ張り込むなど、業界の常識では考えられない行動を取っていたそうです。

 心理学では、親が親としての務めを果たさず、子どもに安全な場所を提供できなかった家庭のことを“機能不全家庭”と言い、そういう家庭に育った子どもはアダルトチルドレンと呼ばれています(本来は、アルコール依存症の親のもとで育った子どもを指した言葉ですが、現在では機能不全家庭に育った子ども全般に用いられています)。上述したエピソードから考えるのなら、なぎこもアダルトチルドレンと言って差し支えないでしょう。子どもは親に見捨てられたら生きていけないので、そういう環境で生き抜くために、自ら“役”を引き受けます。アダルトチルドレンの担う役はいろいろあるのですが、なぎこが演じたのはその一つ、ファミリーヒーローでした。親が喜ぶこと、家族の自慢になる業績をあげれば、家族がその時だけは笑っていられるからです。