山下が主演した2022年のNHKドラマ『正直不動産』の場合、同局がジャニーズ事務所にほとんど気兼ねしないから実現したと見られた。2017年に退所し、新たな所属事務所・CULENに移った元SMAPの香取慎吾(46)稲垣吾郎(49)、草なぎ剛(48)もNHK-Eテレの『ワルイコあつまれ』などには出演してきた。 

 一方、日テレは20年以上もジャニーズ勢が『24時間テレビ』のメイン級を務めるなど同社と関係が濃密。民放随一と言われる。それなのに山下がエックスゲームズのアンバサダーを務めたのだから、他局やほかの事務所は衝撃を受けたのだ。

「退所者らとの融和を勧めてするのは主に外部から招いた人たち。世間の人がジャニーズ事務所に悪感情を抱くことを懸念しているのだろう。このため、各局から退所者の出演話を聞かされても鷹揚(おうよう)に構えるようになった。芸能関係者すら“絶対にあり得ない”と思われていたことも実現した」(大手芸能事務所幹部)

解散したSMAPの共演、ジャニーズ愛を貫くファンたちの心情

 元SMAPの中居正広(50)と香取慎吾が4月30日放送のフジテレビ系バラエティー番組『まつもtoなかい』で共演した件である。中居も2020年に退所し、個人事務所を設立したが、マネージメント面などで今もジャニーズ事務所と関係が深い。

 だから、昨年12月に中居がTBS系のバラエティー番組『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』を体調不良で休んだ際には、嵐の二宮和也(39)による代打MCが実現した。このため、ジャニーズ事務所との関係が良好ではないCULENの香取が中居と共演したのは画期的だった。

 その上、これまでだったらフジテレビ側が特に慎重になる時期に2人は共演した。ジャニーズ事務所が筆頭タレントと考える同じ元SMAPの木村拓哉(50)がドラマ『風間公親 -教場0-』に主演中だからである。

 6月22日から世界配信されるNetflixのドラマ『離婚しようよ』には2019年に退社した元・関ジャニ∞の錦戸亮(38)が準主演級で出演する。制作会社がつくった配信ドラマではなく、制作はTBSで、プロデューサーも同局スタッフ。錦戸が次に出るのは同局のドラマではないか。

 この流れが止まることはない。今の状況で同社は世間の目を無視できないからだ。特にファンクラブの動向は気にせざるを得ない。

 ファンクラブは同社を経済面で支えているからである。グループや個人ごとに別れているが、いずれも入会費1000円で年会費4000円。嵐だけでも会員数は推定で300万人を超えており、その年会費は年間合計約120億円に達する。Snow manは同113万人なので、45億2000万である。

 複数のファンクラブに入っている人もいるため、会員数は延べ約1000万人。同社の資産は不動産だけでも1000億円は下らないとされるものの、会費収入は大きい。

 また、経済面より重いのは会員が同社の岩盤支持層であること。自分が会員ではないタレントたちも応援し、CDを買い、ドラマを観てきた。ベテランを支え、新人を押し上げてきた。同社のファンの核なのだ。

 なにより、会員たちは何があってもジャニーズ愛を貫いてきた。その活動や方針を支持してきた。もしも一斉に離反されたら、同社の屋台骨が揺らぐ。

 会員の声に応えるためにも改革が求められる。待ったなしである。

取材・文/高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)放送コラムニスト、ジャーナリスト。1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立。