手術で乗り切った3度の転移

 実は佐々木さん、左肺への転移だけでなく、直腸の局所再発、右肺への転移、さらに今年2月には左肺への転移と、4度の再発転移を体験している。

2018年、ストーマ閉鎖のために入院した佐々木さん。手術翌日には歩けるようになったという
2018年、ストーマ閉鎖のために入院した佐々木さん。手術翌日には歩けるようになったという
【写真】佐々木さんが実際につけた「人工肛門」と「ためるためのパウチ」

「肺の転移は3回とも運よく手術で取り除くことができ、直腸の再発も永久ストーマの手術で偶然見つかったので同時切除しました」

 永久ストーマの選択や度重なる再発転移とさまざまな障壁を乗り越えてきた佐々木さんだが、苦しい闘病中に助けられたのが患者同士の支え合いだった。

「排泄は尊厳に関わることでもあり、なかなか人に話せません。言ったところで経験のない人には理解しづらいですし。でも患者同士で悩みや経験を共有し、『同じ症状の人がいるんだ』、『こんなにトイレに行っているのは自分だけじゃない』と知るだけで救われるんです」

 そうした自身の体験を伝えることが誰かの役に立つかもしれないと、YouTubeチャンネル「大腸がんサバイバー カロリーナ」で情報を発信。

 さらに女性患者同士で、消化器がんの経験談や悩みを共有できるSNSコミュニティー「ピアリングブルー」の運営に携わっている。

「同じ悩みを抱える女性たちが気軽に情報を共有し、支え合える場をつくりたいと思い始めました。スマホの普及も後押しして、今では若い世代から高齢の患者さんまで利用者は幅広いです」

 いまや、女性がん死亡数第一位になった大腸がん。自分は関係ないと思っている人も、決して人ごとではない。

「内視鏡検査は面倒だし、もしがんだったら怖いからと大腸がん検診を受けない人もいますが、手遅れになってからでは取り返しがつきません。40歳を過ぎたら定期的に受けることをおすすめします。

 また少量の出血など少しでも異変があったら積極的に大腸内視鏡検査を受けてほしいです」

佐々木香織さん●1972年生まれ。YouTubeチャンネル「大腸がんカロリーナ」にて自身の大腸がん経験を発信しながら、がんサバイバーの支援を行う。
佐々木香織さん●1972年生まれ。YouTubeチャンネル「大腸がん カロリーナ」にて自身の大腸がん経験を発信しながら、がんサバイバーの支援を行う。

(取材・文/井上真規子)