注射器から検出されたもう一つの成分

「押収した注射器から覚醒剤の成分が検出され、覚醒剤所持容疑でも逮捕。トリカブトで接近目的は遂げたにもかかわらず、あえて覚醒剤を摂取させようとした狙いは何か。アコニチンも覚醒剤もネットで購入しており、容疑者のバッグからは覚醒剤約0・2グラムとアコニチンの粉末約1グラムが見つかった」(同・社会部記者)

 長濱容疑者は当初、警察の取り調べに対してA子さんへの好意を認め、「距離を縮めたかった」とする趣旨の話をしている。

 しかし、毒物の混入については「知らないうちに混ざってしまった」などと否認しているという。

 厚生労働省によると、アコニチン中毒は食後10〜20分以内に発症することが多い。唇や舌のしびれに始まり、次第に手足がしびれ、嘔吐、腹痛、下痢、不整脈、血圧低下などを引き起こす。けいれん、呼吸不全に至って死亡することもあり、致死量はわずか2〜6ミリグラムという猛毒だ。

 東京都保健医療局はホームページで誤食しやすい有毒植物としてトリカブト類を取り上げ、国内に数多く自生していると注意喚起する。

 容疑者宅は東京都足立区にある駅近の賃貸マンション。

 近所の商店のスタッフは、「よく似た男が来店したがトラブルはなかった」と話しつつ、あきれた表情を見せた。

「1986(昭和61)年、夫が妻に保険金1億8500万円をかけトリカブトで毒殺する事件が起き、'99(平成11)年に疑惑が発覚した本庄市の事件では、八木茂死刑囚が愛人と共謀してトリカブト入りのあんパンを食べさせるなどして3人が死傷し保険金3億円をだまし取っていた。令和の事件は色合いこそ異なるが、医療従事者が同僚に好意を伝えられず、毒を盛る手法を取った点で異常性を感じさせる」(冒頭の新聞記者)

 事件の全容解明が待たれる。