だが実は、これは『水曜日のダウンタウン』の企画。別室から大喜利自慢のお笑い芸人たちがあのにどんなコメントをするかを遠隔でこっそり指示していたのである。反響は大きくネットニュースでも取り上げられ、あのの存在がさらに知られるようになった。

 その後、『日本シン人種図鑑』(テレビ東京系)にレギュラー出演。個性的な生きかたをしている一般人を紹介するバラエティ番組だが、そのなかでMCのひとりであるあのの普段のユニークな生活に密着する特別企画もあった。

 現在は、深夜の音楽トークバラエティ番組『あのちゃんの電電電波♪』(テレビ東京系)でMCを務める一方、『呼び出し先生タナカ』(フジテレビ系)への出演など各バラエティ番組で引く手あまただ。固形物の野菜が食べられず、グミなどのお菓子ばかり食べているという偏食エピソードもいまや有名だろう。

 KDDI「au三太郎シリーズ」での印象的な「あまのじゃ子」役など、CMにも続々登場している。その売れっ子ぶりは、気が早いかもしれないが、「今年の顔」のひとりになりそうなくらいの勢いを感じさせる。

「ちゅ、多様性。」でアーティストとしてブレーク

 とはいえ、バラエティ番組での活躍だけならば、「不思議ちゃん」や「おバカキャラ」といったよくいるバラエティアイドルのひとりとして片付けられてしまっていただろう。バラエティでの活躍ももちろん簡単なことではなく称賛されるべきことだが、あのにおいて特筆されるのは、音楽の分野でもブレークを果たしたことである。

 ゆるめるモ!脱退後「ano」の名義でソロアーティストとして2020年9月に「デリート」という曲でデビュー。その後、2022年4月にはメジャーデビューを果たした。その第3弾となった配信限定シングルが、「ちゅ、多様性。」(2022年11月発売)である。

 この楽曲は、人気アニメ『チェンソーマン』第7話のエンディングテーマとしてつくられたもの。あのはボーカル以外に作詞(元・相対性理論の真部脩一との共作)も担当している。

 詞の内容は、「熱く とろけるくらいに溢れた気持ち」「このまま中毒になるまでチューしよ」のようなフレーズもあるように、軽快な曲調に乗せて綴られる熱烈なラブソング。だが所々に「我愛你(ウォーアイニー)」のような中国語、さらには「ポンチーカン」と麻雀用語(あのの趣味のひとつでもある)まで混じるところは遊び心満載だ。

 そしてサビは英語詞になるのだが、そこでの「Get on chu!」が「ゲロチュー」と聞こえるところがキャッチーで、この部分の振り付けも可愛らしい。それがフックとなってTikTokなどSNSで「ゲロチューダンス」がバズり、ヒットにつながった。それを受けて、テレビ地上波の音楽番組にも出演が相次いでいる。

「熱烈なラブソング」と紹介したが、必ずしもそこで描かれる恋愛は男女のそれに限定されたものではない。「ちゅ、多様性。」というタイトルが、まさにそのことを表している。あの自身も、以前テレビで自らが多様性の代表であると語っていた。