「皇族が無駄に税金を使っている」

「上皇ご夫妻が批判される理由の1つとして“皇族が無駄に税金を使っている”との考えが色濃くなってしまったことが挙げられます。これは小室眞子さんの結婚騒動以降、より顕著となりました。こうした考えから、那須や軽井沢でのご静養も“無駄遣い”と捉えられてしまったようです」(河西准教授、以下同)

 批判の原因はそれだけではないという。

「もう1つの理由は、誹謗中傷を行う人が“正当性がある”と錯覚しているからです。現在の天皇、皇后両陛下が皇太子ご夫妻だった時代、雅子さまの体調不良や、愛子さまの不登校などの問題が相次いで起こり、世間からは批判的に受け止められていました。

 今、批判を行っている人はそれをなぜか“上皇ご夫妻のせいだ”と認識している場合が多い。つまり、両陛下が窮状に陥った理由が上皇ご夫妻にあると考えている彼らは“自分たちの批判に正当性がある”と考えているのです」

 ただ、今年のご静養で警備が増強されていた背景は、誹謗中傷とは別にあるようだ。

「警備強化の背景には安倍晋三元首相の銃撃事件や、岸田文雄首相の襲撃事件が挙げられます。匿名という点を利用して、安全な場所から好き勝手書く人たちが、上皇ご夫妻に直接危害を加えることは考えにくい。ただ、そうした過激な発言に触発された人が、上皇ご夫妻に危害を加えることがないよう、警戒しているのでしょう」

 想定外に美智子さまの余生は難航しているようだ。

河西秀哉 名古屋大学大学院人文学研究科准教授。象徴天皇制を専門とし、『近代天皇制から象徴天皇制へ―「象徴」への道程』など著書多数