親の死後“もめた”“恨んだ”子ども世代の後悔の声

 後悔先に立たずだが、親の死後、そんな思いに駆られる人は少なくない。1万5000件以上の相続相談に応じてきた曽根さんに、2つの典型事例を聞いた。反面教師としよう。

実家を売ることができず空き家のまま「負の遺産」に

 実家を離れ、進学、就職して結婚し、2人の子どもに恵まれたCさん(50代女性)。両親は年金暮らしで悠々自適の生活を送っていた。

「ところが当時85歳だった母親が突然亡くなってしまいました。1人になった高齢の父親が介護施設に入所するも、1年たたないうちに認知症を発症し、その後亡くなりました」(曽根さん、以下同)

 両親が残した遺産は実家の土地と建物、そして預貯金。同様に実家を離れていた弟と半分ずつの相続だが、問題は実家の扱いだった。

「Cさんは処分して売却した金額を2人で分ければいいと考えていたところ、弟はこれに大反対。思い出の詰まった実家を手放したくないというのです」

 何度説得しても了承を得られず、姉弟の関係は険悪に。実家はいまだ空き家のまま残っているとのこと。

「実家に住むのが親だけになった段階か、両親のどちらかが亡くなった際に、実家をどうしたいか親に意思確認しておけばよかったでしょう」

スマホのパスワードがわからず資産3000万円が消息不明に

 上場企業を定年退職後、コンサルタント業をしていた70歳の父親が突然くも膜下出血で倒れ、帰らぬ人に。父親の財産は自宅と数百万の預貯金のみ。夫婦別財布ゆえ母親は気にしなかったが、もっと財産があってもおかしくない。するとIさん(40代男性)に父親の友人から思わぬ情報が寄せられた。

「ネット証券や暗号資産など、ネット上で複数の取引をしていたはずだと聞いたのです。しかし、肝心のスマホのパスワードがわからず、確認できなくて途方に暮れます」

 その後、父親の愛読書の中からパスワードのメモを発見し、スマホのロックを解除。

「ところが今度は仮想通貨取引所のID、パスワードがわからない。再び壁にぶち当たってしまったわけです」

 結局、ネット上に眠る資産の消息はつかめず。少なくとも3000万円以上あるはずだと悔やむ日々を送る。

「スマホのパスワード、ネット機関のID、パスワードを管理してもらい、所在を共有しておくべきでした」