なかでも4つ星満点中の4つ星を与え、大絶賛するのは、映画批評サイトRodgerEbert.comのトップ批評家ブライアン・タレリコだ。

「史上最も偉大なアーティストのひとりによる新たな映画が今週公開される。予想しなかったファンタジーだ。2013年の『風立ちぬ』が最後の作品かと思われたが、彼にはまだ言いたいことがあった。そんな彼は、自らの人生、芸術、関心を、大傑作『君たちはどう生きるか』に織り込んだのだ。それはすばらしい寓話でもあり、彼のキャリアの総決算のようでもある」とタレリコ。さらに「美しく、深く、魅惑的なこの映画は、2023年の最高作のひとつだ」とも述べる。

半自伝的なタッチが感動的

宮崎駿氏とジブリ最新作の映画『君たちはどう生きるか』(右はスタジオジブリ公式ツイッターより)
宮崎駿氏とジブリ最新作の映画『君たちはどう生きるか』(右はスタジオジブリ公式ツイッターより)
【写真】自宅近くの“トトロの森”で、早朝のゴミ拾いをする宮崎駿氏

「Los Angeles Times」のトップ批評家ジャスティン・チャンは、『君たちはどう生きるか』を、今年の個人的ベスト映画の2位に挙げる。彼にとっての首位は山田太一の小説を原作にしたアンドリュー・ヘイ監督の『異人たち』で、チャンは、「宮崎駿は私たちにどう生きるのかを、アンドリュー・ヘイはどう愛するのかを問いかける」と書いた。

 この映画について「半自伝的なタッチがあるのが非常に感動的。とはいえ、あまり深読みしすぎるべきではないだろう。彼の作品にパーソナルなタッチがなかったことはないのだから」と書くチャンは、映画の前半で眞人が自分の頭に石をぶつけてわざと怪我をするシーンに触れ、「ここには、宮崎の映画のハートにいつもある、恐れのなさ、無慈悲さがある。彼はキャラクターに深く共感するからこそ、暴力というリアリティからも目を背けないのだ。それらの愛するキャラクターが喜びを感じる可能性を否定しないのと同じように」とも述べる。

「San Francisco Chronicle」のトップ批評家G・アレン・ジョンソンの評価も、4つ星満点中の4つ星。この作品を「天才クリエイターの頭の中を直接映し出すもので、彼の最高作のひとつ。もしこれが宮崎の最後の作品なのだとしたら、なんとすばらしいフィニッシュなのか」と褒めた。

 一方で、「Wall Street Journal」のカイル・スミスは、「絡み合うストーリーはやや複雑で、宮崎の最高の作品からはほど遠い」ととらえている。