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ー マイナス20度の洞爺湖でのロケは紙おむつを着けて臨む

 この日、背中をぱっくりと大胆に見せたブラックのドレスに13センチのピンヒールを合わせた華やかなスタイルで、カルーセル麻紀は現場に現れた。

 2月9日に公開される映画『一月の声に歓びを刻め』で、カルーセル麻紀がメインキャストを務める。本作品は3つの物語から構成され、最初のエピソードに登場する初老のマキを演じている。

マイナス20度の洞爺湖でのロケは紙おむつを着けて臨む

 '08年以来となる映画への出演。完全“ノーメイク”で臨むなど、体当たりの作品だ。

私が演じた役は結婚して、子どもがいる、“父親”のマキ。トランスジェンダーで結婚もしていて子どもがいるというのは、私にとっては身近なことではなくて、最初はまったく役に入り込めなくて……。でも、台本を読み込んでいくうちに、“狂ったシーンはこうしてみよう”などと表現がどんどん浮かんできました

 舞台は北海道・洞爺湖。撮影はマイナス20度の“極寒”の中で行われた。

「湖を目指して、雪が積もる中を歩いていくシーンの撮影では、足跡がついてしまうのでチャンスは1回。トイレもない山奥だったので、紙おむつを着けて臨みました。本当に過酷だったけれど、カメラが回ると、気持ちが高ぶってしまって。

 自然と涙が出てきて、台本にはありませんでしたが、手から湖に突っ込みました。倒れたときに、上から旧友の故・太地喜和子さんが見えたような気がして、私の演技に大女優がオッケーを出してくれたんだなと、感動でした

 インタビュー現場でも、冗談を言い合ったりと、非常に距離の近いカルーセルと三島有紀子監督。厳しい状況での撮影でも、現場のチームワークは最高だった。

“80歳の麻紀さんが頑張っているんだからみんな頑張ろう”というムードになっていきました。それでも、冷たい風が吹きつけるわで、もうこの作品に殺されてしまうんじゃないかなと思ったほど(笑)。マネージャーがいたら心配して、中止させたりカットをかけたりしそうだったので、遠くに行かせていました。この撮影は過酷すぎて、もう芸能界は“やりきった”と思いましたが、三島監督となら、また作品を作りたいですね」 

 今年でデビュー60周年を迎えるカルーセル。これまでの芸能生活を振り返ってもらうと……。

芸能界を目指したというよりも、気づいたときにはステージに立っていました。大好きなパリに行くために“今月は仕事入れません!”ということができるから、ワガママな私にピッタリの世界。特に楽しかったのは、遊びも仕事も全力でやりつくした30代の時ですね

 81歳とは思えない、引き締まったボディラインと、ピンヒールを美しく履きこなす彼女の姿。それでも、カルーセルはこれまでに、動脈硬化のため6回の手術を受け、'20年4月には脳梗塞で倒れ救急搬送された。

やっぱり、健康が一番と思い知らされましたね。そう思って、今は一日に5000歩を歩くように心がけています。健康のためでもあるけれど、身体中の脂肪が取れてスッキリ。他にも美容のこだわりがあって、今日も撮影に向けて、寝る前におでこをテープでとめて“形状記憶”させてきたんですよ(笑)。

 テレビ番組に出るときも、本番ギリギリまで指でおでこを押さえておいたり……。細かいことだけど、こういう積み重ねが大切だと思っていて。あと20年は元気に生きたいよねって黒柳徹子さんたちとよく話しています」

 これからも、美しく回り続けるカルーセル(回転木馬)の人生が楽しみだ。

映画『一月の声に歓びを刻め』 2月9日(金)〜テアトル新宿ほか全国公開(C)bouquet garni films
映画『一月の声に歓びを刻め』 2月9日(金)〜テアトル新宿ほか全国公開(C)bouquet garni films

映画『一月の声に歓びを刻め』 2月9日(金)〜テアトル新宿ほか全国公開