退院後は体重・血圧・体温を毎日計り、体調管理に努めた。現場復帰も早々に果たし、入院時の遅れを取り戻すべく仕事に邁進(まいしん)している。しかし、そこでひとつ落とし穴が。昨年夏、急性腎障害を患い、緊急入院することに。

「退院後は炎症が起きないよう、食事に気をつけてはいたんですけど。わが家は和食中心で健康的なほうではあるけれど、やっぱり外食も多い。疲れもあったし、あと抗がん剤による腎臓へのダメージが少なからずあったようです」

もっと精力的に仕事をしていきたい

 闘病から3年がたつ今、体調はと聞くと、「がんは寛解しました。ただ一度がんを発症した人は再発の可能性が高い。そこは覚悟の上ですね」

 と淡々と語る。現在は定期的に通院しつつ、再発防止の維持療法が続く。

「今はこの身体の状態を維持していくことが第一。その上で一つひとつすべきことに取り組んでいくだけ。やりたいこと、やらなきゃいけないことがまだたくさんあって。俳優というのは他人を生きる仕事で、本当に難しい。

 でもそれを探るのが好きなんでしょうね。もっともっと精力的に、まだまだ仕事をしていきたいという意欲は、前にも増して大きくなっている気がします」

佐野史郎(さの・しろう)●俳優。1955年生まれ。1992年TBS系金曜ドラマ『ずっとあなたが好きだった』で桂田冬彦(冬彦さん)を演じ、脚光を浴びる。その後も、ドラマ・演劇・映画・ドキュメンタリー番組・ナレーション・朗読など数多くの作品に出演するほか、映画監督としても作品を発表。


取材・文/小野寺悦子