2023年、デビュー初戦こそ黒星をつけたが、その後は6連勝。かつてあった“弱さ”は、すでに過去のものだと思われた。しかし─。

 2023年の7月場所、大の里は瀬戸際にいた。新十両への昇進を目指していたが、成績は3勝3敗。次の取組で負ければ昇進は遠のいてしまう。

地元・石川県の被災者に勇気を

2025年5月28日、横綱昇進の伝達式を終えて満面の笑みを見せた大の里
2025年5月28日、横綱昇進の伝達式を終えて満面の笑みを見せた大の里
【提供写真】少年相撲大会で表彰された大の里、“父の里”として話題の父・知幸さん

「3敗した取組の相手は、泰輝よりも身体の小さな相手だったんです。いつもの彼なら、勝てるはずだと思っていました。そんなとき泰輝から電話があったんです。そこで私は“自分の相撲に自信を持て!”と伝えました」

 恩師の言葉を胸に、大の里はぶつかった。得意とする前に出る相撲で、対戦相手を寄り切りで下す。

 弱さを克服し、唯一無二の力士へと飛翔していく。

 2024年9月には大関昇進を決め、1年足らずで横綱だ。初土俵から殊勲賞2回、技能賞3回、敢闘賞3回を受賞したほか、優勝は4回も経験。

 前出の森山さんは、

「昨年、大関昇進を果たした後に会った泰輝は“いずれ頂点に立ちたい”と話しており、いい流れにあると感じていました。それが今や横綱ですからね。私は今、昨年に地震のあった能登で復興の仕事をしているのですが、泰輝が活躍するたびに、街中で“大の里”という言葉を耳にするようになりました。泰輝が活躍することで、被災した人たちもすごく勇気づけられて、その瞬間だけでもみんな笑顔になるんです。ケガに気をつけて、いつか令和の大横綱と呼ばれる存在になってほしい

 2024年1月に発生した能登半島地震で、大の里の地元・石川県は甚大な被害を受けた。復興は、まだ道半ばだ。

 これからも被災地の光となる新横綱の活躍に期待!