目次
Page 1
ー 「よく泣いていた」子ども時代
Page 2
ー 「試合でビビってしまう」
Page 3
ー 相手を知りすぎてしまう癖
Page 4
ー 地元・石川県の被災者に勇気を

 明治神宮で5月30日、堂々とした立ち振る舞いで奉納土俵入りをしたのは第75代横綱となった大の里(本名=中村泰輝)。

 2023年に初土俵を踏んでから、わずか2年、13場所で横綱への昇進を果たした。これまで最速の昇進記録を保持していた昭和の大横綱・輪島ですら、昇進までに21場所を要した。

 5月28日、茨城県阿見町にある二所ノ関部屋で行われた伝達式で大の里は、

「唯一無二の横綱を目指す」

 と口上を述べた。

 史上最速での横綱昇進という記録を打ち立て、“唯一無二”の存在となった新横綱だが、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。

「テレビなどで見ると硬い表情をしている泰輝ですが、実はよく笑うんです。地元に帰ってきて食事をするときは、子どものころと変わらぬ笑顔を見せてくれるんですよ」

 そう話すのは、森山昇さん。石川県津幡町で大の里が子どものころに通っていた少年相撲教室の元監督だ。

「よく泣いていた」子ども時代

「小学生のときは心の優しい子だなというのが一番印象に残っています。学年が下の子の面倒をよく見ていましたから」(森山さん)

 教室では“心優しき兄”のような存在だったという大の里だが、相撲の実力はどうだったのか。当時コーチとして指導に携わっていた長井恒輝さんが明かす。

よく泣いていたという印象ですね。教室には、練習相手になるレベルの子がいなかったので、森山さんなど大人の私たちが稽古相手でしたから。だからこそ、つらい場面もあったはずです