“イギリス色”に反骨精神あり!?
ところが、日本の皇室だけは違います。もっと言えば、敗戦によってアメリカの子分ともいえる存在になった日本において、皇室だけは大英帝国的であり続けています。
上皇さまと上皇后さまは、イギリスの上流階級のスポーツであるテニスを好み、しかも出会いのきっかけは軽井沢のテニスコートです。軽井沢という場所は、イギリス人宣教師や英国公使館関係者らを中心に避暑地として発展した場所です。こうしたイギリス色の強い物事を重用されるというのは、あくまで私見ですが、アメリカを拒否する強い反骨精神の表れとも受け取れるのです。
また、上皇后さまの英語は、発音や表現において古典的な宮中英語の特徴が見られ、イギリスの識者たちを唸らせています。加えて、皇室の方々は山登りを好みますが、着用する服装は、チェックのシャツにスラックス。このスタイルは、イギリスの上流階級が好むパターンなんですね。アメリカ発のカジュアルなスポーツウエアは着用しないし、マウンテンバイクに乗るなんてもってのほか。避暑地で乗っていらっしゃる自転車もイギリス風のものでした。
人の目に触れる場では、あくまでイギリス式を貫く姿勢に、“日本は決してアメリカの属国ではない”という気概を、私は感じてしまいます。少なくとも、敗戦後もイギリス的な規範を維持し続けていることに畏怖の念を抱くのです。

谷本真由美 たにもと・まゆみ 1975年、神奈川県生まれ。著述家。元国連職員。ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。X上では、「May_Roma」(めいろま)として舌鋒鋭いポストで人気を博す。著書に『世界のニュースを日本人は何も知らない』シリーズ(ワニブックス【PLUS】新書)など著書多数。
構成/我妻弘崇