『逆転しない正義』

 のぶをそこまで“愛国の鑑”にし、戦時下や悲惨さを強調するシーンが長いのはなぜなのか。

「それは、第12週のサブタイトル『逆転しない正義』にあります。小松暢さんはやなせ氏に“正義は逆転することがある。信じがたいことだが。じゃあ、逆転しない正義とは何か? 飢えて死にそうな人がいれば、一切れのパンをあげることだ”と言っていたそうです。『アンパンマン』の原点ですね。

『逆転しない正義』の対極にある『逆転する正義』が何かというと、典型的なのが戦争です。戦争の始まりはたいてい“正義”です。日本も、“欧米列強から解放するため”という理由を掲げて東南アジアに侵攻しました。国民は“日本は正義のために戦争しているのだ”と思っていましたが、敗戦で違った部分も浮かび上がり、価値観が変わりました」(前出・民放プロデューサー)

朝ドラ『あんぱん』で、やなせたかしさんの妻・小松暢さんを演じる今田美桜(公式Xより)
朝ドラ『あんぱん』で、やなせたかしさんの妻・小松暢さんを演じる今田美桜(公式Xより)
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 主人公・のぶも、戦争で愛する人たちを亡くし、その悲惨さを知って自分は間違っていたことに気づくことになる。つまり、『逆転しない正義』とは何かを伝えるために、のぶを“愛国の鑑”にし、戦争の悲惨さを強調しているのではないかという。

 NHKの関係者は、

「視聴者は今田美桜さんじゃなく、のぶが嫌いなんですよね。それだけ感情移入するということは、ドラマに入り込んでいる証拠ですので、心配はしていません。もう少し待っててください。敗戦で、のぶは変わります。誰からも好かれるヒロインとなり、視聴者も気持ちよく朝、家を出ることができるようになりますから」

 と、のぶに対する視聴者の反応は、かえってありがたいという。

 今後の展開に期待は膨らむ。この先、視聴者の反応も“逆転”するのか――。