再び「生きがい」を。能登復興への願い
鹿賀にとっての生きがいは何か、聞いてみた。
「やっぱり芝居をするということですね。ちょっと時間ができたときは、遊びに行ったりすればいいんですけど、僕、しないんですよ(笑)。力がスッと抜けるとなぜかものぐさになって、ゴロゴロしたりね(笑)。
だから仕事をしているときのほうが身も心もアクティブになりますね。やっぱり身体が元気じゃないと芝居の発想も湧かない。芝居の根本は元気な肉体にあると思うんです」
とキッパリ。日々の健康維持にも余念がなく、自宅でのエアロバイクや腹筋、背筋、腕立て伏せは日常的にやっているそう。
「身体を鍛えるというよりも、現状維持のためですね。足が弱らないように、俊敏な動きができるようにと心がけています」
鹿賀に改めて能登の復興の遅れについて問うと、顔から笑みが消え、語り始めた。
「陸路がダメで、海も海岸線が隆起して船が運航できないと。空から行けばいいじゃないかと思いましたが、そういうわけにもいかなかったみたいで。しばらく立ち行かない状態が続きました。憤りというか、なんとかならないものかという気持ちがずいぶんありましたね」
と歯がゆさを吐露し、
「やむを得ず今の場所を離れなければいけない人たちがいます。でも高齢のご夫婦が家を再建するのは難しいですよ。国や県が支援の手を差し伸べられればと思いますけど、そう簡単ではないようですね」
今回の映画が、能登に生きる人々が再び「生きがい」を見いだすきっかけになることを願っている。
最近になって、都会から能登へ移住する若者も現れ始めていることに対しては、「そういう人たちがまた、能登の復興に関わってくれるといいな」と再び微笑んだ。
鹿賀が渾身の演技で魂を吹き込んだ、『生きがい IKIGAI』。能登の復興への願いを込めたメッセージであり、私たち自身の「生きがい」を再発見するきっかけにもなるかもしれない。

<取材・文/浦上優>