しかし、元妻が亡くなってしばらくしたあと、遺品として携帯を受け取った次女から「ママからパパに未送信のLINEが残っていたよ。今から送るね」と連絡があった。そこには「今日は(病院に)来てくれて、ありがとう」とあった。

人生の最期は見届けることができた

 いつ入力したのかはわからない。送信するのを忘れたのか、送信する気力も体力もなかったのか。宮川さんは「元妻からの人生最後の贈り物だと思っています」と微笑む。

家族4人でディズニーランドへ。家族団らんのワンシーンだが、普段は子どもたちの目の前でケンカをすることもあったという
家族4人でディズニーランドへ。家族団らんのワンシーンだが、普段は子どもたちの目の前でケンカをすることもあったという
【写真】絵に描いた幸せ家族に見えるが…普段から子どもたちの前でケンカすることもあったという宮川さん

 

何か伝えたいことがあったのかもしれませんが、それは謎です。最後までミステリアスな女性でしたね。結婚生活は全うできなかったけど、人生の最期は見届けることができた。不思議な関係だったと感じています

 まだ話す元気があったころ、「私はもうダメかもしれないから、子どもたちをよろしくね」と言われた。その言葉を遺言だと思い、「約束はしっかり守るぞ」と固く決意した宮川さん。看取りを通じて感じたことがあるという。

「元妻は楽観的な人だったので、胸にしこりがあるとわかってもなかなか病院を受診しなかったり、手術後の抗がん剤治療も受けなかったりしました。副作用がイヤだったのでしょう。

 娘たちも治療をすすめたと思いますが、素直に言うことを聞く人じゃないですからね。娘たちは、もっと早く病院に連れて行けばよかったと悔やんでいるかもしれない。
 僕は家族を後悔させたくない。だから将来、病気になったら、娘たちの意見に従おうと思っています。それが、元妻を看取った教訓ですね

取材・文/佐久間真弓

みやかわ・いちろうた 1966年3月25日生まれ、東京都出身。A型。映画と競馬とクイズと箱根駅伝を愛する俳優。2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』で藤原顕光役を好演。30代半ばから晩年の77歳までを演じた。