社会現象を巻き起こし、○○ロスの立役者

 そして1位は、やはりこの人。『あさが来た』('15年)で五代友厚を演じたディーン・フジオカが64票を獲得した。“五代ロス”の言葉も生まれ、社会現象を巻き起こした五代様。主人公・あさ(波瑠)の背中を押し応援するも、病に倒れ亡くなってしまう。それまで日本のドラマにあまり出ていなかったディーンは、「初めての出演シーンで、あまりのカッコよさに衝撃を受けた」(神奈川県・61歳)、「こんな素敵な俳優さん、今までどこに隠れてたんだ!と驚いた」(千葉県・61歳)と、日本中を一瞬で虜にした。

「“NHKさん、こんなイケメンを見つけてきてくれてありがとう”と思うような素晴らしい配役でした。『あさが来た』は町人の物語ですが、五代さんは武家出身なので、異色の人をキャスティングしたかったそうなんです。 

 そこで抜擢されたのがディーンさんで。五代さんもディーンさんもグローバルな方なので近い雰囲気がありますし、英語の発音が素晴らしかったのも素敵でした」

 ディーンは'21年の大河『青天を衝け』で再び五代を演じている。

「脚本が同じ大森美香さんなんです。朝ドラと大河で同じ役をやるなんて、すごいですよね。それくらい私たちも五代様=おディーン様、と刷り込まれてしまった(笑)」

 五代もあさに好意を寄せ、背中を押しつつも思いは封印。

「一回だけ、親友の大久保利通が暗殺されたとき悲嘆に暮れて、あさを抱きしめるシーンがあって。朝からドキドキでした。また、顔もカッコよすぎましたけど、英語まじりのセリフや唐突に現れて去っていく謎っぷりなど、魅力にあふれたキャラ。朝ドラにロスを生み出した男だと思います」

 6位以下でカトリーヌさんが注目するのは8位の森山直太朗。『エール』('20年)の主人公・裕一の恩師、藤堂清晴役で、インパール作戦の最中に慰問に来た裕一と再会するが敵襲を受け、裕一の腕の中で息を引き取るという人物だ。

「先ほど挙げたロスになるパターンとは少し違うんですが、彼もまた主人公の背中を押してくれた存在。戦場のシーンがすごくリアルでしたが、これはコロナ禍で撮影休止になってしまったときに、しっかりリアルに描こうと脚本から書き直したそうなんです。視聴者に衝撃を与えて、鮮明に記憶に残る最期だったと思います」

 また、「ロスが生まれる朝ドラはいい朝ドラなのでは」とカトリーヌさん。

「主人公以外の登場人物も、視聴者に愛されインパクトを残したということですから。特にベスト5に2人入った『虎に翼』は登場人物全員のキャラが立っていました」

『あんぱん』もすでにロスキャラ多数。つらいからもう誰も退場しないでと思いつつ、この先どんな感動場面を見せてくれるのか。最後まで目が離せない!

カトリーヌあやこ 漫画家&テレビウォッチャー。著書にフィギュアスケートルポ漫画『フィギュアおばかさん』(新書館)など

<取材・文/今井ひとみ>