映画の中で印象的だった場面のひとつが、麗華さんが筋トレに励み、ボディコンテストの大会にまで出場していたことだ。
「うつ病やPTSD、トラウマを抱える人は身体を動かすほうがよいという本を読んで、筋トレを始めるとハマってしまい、本格的に取り組むようになりました。実際、筋トレはメンタルコントロールに非常に役立っています。大会に出場し、3位に入賞することもできたんです。ただ、現在は甲状腺の病気があり、思うようにトレーニングができないのが残念です」
「真実を語ってほしかった」
映画の中では父親への思いも語られており、父が生まれ育った場所を訪れるところや命日に花を捧げるシーンもある。普通に父を弔う娘の姿であり、その場面だけを見ると父が元死刑囚の麻原彰晃であることが結びつきにくい。
小さいころ、麗華さんは優しい父を全面的に頼りにしていた。それは母の精神が不安定だったため、父が母の分も愛情を注ぎ、育児に関わってくれた背景もあるという。麗華という名前は、父が占いでいい画数を選んでつけてくれたものだ。
「父が逮捕される前日、部屋に来るように呼ばれたにもかかわらず『面倒くさい』と感じて行かなかったこと、そしてそのまま逮捕されてしまったことについては、今も深い後悔があります。
なぜ教団が事件を起こすことになったのか、父の口から一切聞くことができないまま、死刑が執行されてしまいました。精神に異常を来した父に治療を受けてもらい、真実を語ってほしかったです」
麻原には信者の別の女性との間にもうけた子どももいたが、そんな父への嫌悪感はなかったのだろうか。
「きょうだいがたくさんいて楽しかったので、異母きょうだいについても『新しいきょうだいができてうれしい』という気持ちでした。当時はまだ私が子どもだったからでしょうね」
6人きょうだいで育ち、次女である姉、長男である弟とは今も一緒に住んでいる。一方、交流のないきょうだいもおり、教団の後継団体「アレフ」と関係があるとされる母親、次男である弟とは絶縁したままだ。
「私は、オウム真理教の後継団体も解散すべきであると考えています」
教団が起こした事件によって、苦難の多い人生を歩むことになった麗華さんだが、父や母、差別をしてきた人に対し、憎しみや恨みの感情を抱かないようにしているという。
「そうした負の感情が大きくなると、自分自身の身動きができなくなると感じているからです。例えば私を解雇した会社の方もいろいろ悩んだに違いありませんし、それぞれの立場を理解しようと努めています。それでもドーンとうつの状態に落ちてしまうときはあります」