小規模の会場でしか歌わない中島
この歌は失恋した女性が喫茶店のマスターに愚痴をこぼすという内容だが─。
「中島さんはデビュー後も、お店に来てココアを注文したりしていましたが、彼女から恋愛相談を受けたことなんか一度もありません(笑)。
タイトルにある“32”はたぶん私の年齢なのでしょうが、曲が発表された当時の私は30歳ですしね。いろいろ創作がまじっているんです」
お互い別々の道を歩むことになったが、中島の音楽への姿勢は一貫しているように感じると、前田さんは言う。
「中島さんが開くコンサートって1万人以上とかの大規模なホールはほとんどなく、多くは3000人とか小規模の会場なんですよね。たぶん彼女は、音楽を通して観客と1対1のコミュニケーションを取りたいのでしょう。そんな観客に歌を届けたいっていう気持ちは、デビュー前に僕たちが開催したコンサートに出たときと変わっていないんだと思います。お互い年を取りましたし彼女もいつまで歌えるか心配ですが、たぶんまだ大丈夫かと。だって彼女、全然老化していないじゃないですか(笑)」
中島が進む旅は、まだまだ終わらない─。
中島みゆきの半生
●1952年
札幌市に生まれる
●1967年(15歳)
北海道帯広柏葉高校入学
●1972年(20歳)
全国フォーク音楽祭に北海道地区代表で出場し、優秀賞を受賞
●1975年(23歳)
ヤマハが主催する第9回ポピュラーソング・コンテストで入賞。『アザミ嬢のララバイ』でデビュー
●1979年(27歳)
ラジオ『中島みゆきのオールナイトニッポン』がスタート
●1981年(29歳)
『悪女』がオリコン1位に。ドラマ『3年B組金八先生』の劇中に『世情』が使用されて話題に
●1983年(31歳)
『春なのに』で日本レコード大賞作曲賞を受賞。'89年に演劇とコンサートを融合した舞台『夜会』をスタート
●1998年(46歳)
両A面シングル『命の別名/糸』をリリース
●2000年(48歳)
『地上の星/ヘッドライト・テールライト』リリース。NHK『プロジェクトX』の主題歌に採用
●2002年(50歳)
第53回『NHK紅白歌合戦』に出場し、黒部ダムからの中継で『地上の星』を歌唱
●2009年(57歳)
紫綬褒章を受章
●2014年(62歳)
NHK朝ドラ『マッサン』の主題歌に『麦の唄』が採用。第65回『紅白』にも出場
●2022年(70歳)
中止になったライブのアルバム『2020ラスト・ツアー「結果オーライ」』をリリース
●2025年(73歳)
9月にデビュー50周年を迎える