杉本先生が「認知症は生活習慣病である」と強調する理由は、ここにあるわけだ。もちろん、生活習慣だけが認知症の原因であるとまではいえないが、少なくともその改善が認知症予防の第一歩であることは確かなようだ。

最も大事なのは『主体的に生きる』こと

 では、杉本先生がすすめる認知症予防に効果的な習慣とはどのようなものか。

まず、おすすめしたいのは運動です。特に酸素を使う有酸素運動は血行を良くする効果が非常に高い。脳に十分な血液が流れれば、栄養や酸素がたっぷり送り込まれるので脳の細胞も活性化します。気軽にできるのはウォーキング。一日の歩行時間が長いほど認知症のリスクが下がるというデータもあります

 運動のほか、脳を活性化するには生きる姿勢や考え方も重要だと杉本先生は言う。

最も大事なのは『主体的に生きる』ことです。すなわち、誰かの言うことに従って動くのではなく、自分で決めて自分で動くことです。人の後ろについていくだけの生き方は認知症になりやすい。

 高齢者が病気などで入院すると認知症になりやすいのは、病院という、ルールの決まった状況に置かれ、自分で何かを決めたり、家事をすることがなくなるため。今日は何をするか、次に何をすべきかを考えることができていたら、認知症になりにくいのです。介護施設に入所しても同様で、主体的に生きている人は友達もできます

 人との交流が多い人は、認知症になりにくいというデータは世界中で報告されている。では、主体的に生きるにはどうすればよいか。

趣味を持つことです。例えば絵を描くとする。始めるために絵の具を買いに行きますね。名画を見に展覧会に出かけることもあるでしょう。主体的な生き方が求められるのです。音楽鑑賞であれば、コンサートに行ったり、同好の仲間ができて話をするようになったりしますね。趣味は“主体性”を必要とするのです

 運動、趣味、これらの習慣も継続しなければ意味がない。続ける秘訣は何だろう。

「覚悟を決めて真剣に取り組むことです。いいかげんな気持ちだと、忘れてしまったり、今日はいいかなと休んでしまったり。そして何より楽しくなければ続きませんね。

 楽しく続けるポイントは“感謝”です。周りへの感謝を忘れずに、その気持ちを言葉で伝えること。感謝を述べられた相手は笑顔になり、そこから良い人間関係、環境が築けるでしょう。そうすれば、人との交流も生まれ、自然に継続できるのではないでしょうか

 認知症を寄せつけないためには、やはりバランスの良い食事も肝要になる。最近では、認知症を予防する効果が期待できる成分もわかってきているようだ。それらを含む食べ物を日々の食事に取り入れていくことも大事。

体内に発生する活性酸素は、細菌やウイルスから身体を守ってくれる大事な物質ですが、過剰になると細胞にダメージを与え、老化や動脈硬化などの生活習慣病の原因となります。その活性酸素を無毒化してくれるのが抗酸化作用を持つ物質です